ロヒンギャ難民「泥の孤島」移送計画の現実味 足元ではモンスーンの危険性も高まっている
ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ難民が約100万人流入した隣国バングラデシュで雨季が始まった。例年10月頃まで続くモンスーンの豪雨によって、丘陵地帯に造成された難民キャンプで土砂崩れや洪水が発生し、多数の犠牲者が出ることが懸念される。
一方で、バングラデシュ政府は無人島への10万人移住計画を近く開始すると発表し、イスラム教徒にとって神聖な月ラマダン(5月18日から約1カ月間)を迎えた難民たちは新たな試練に直面している。
薪拾いの少女が生き埋めになり死亡
年間を通じて暑いイメージがある熱帯のバングラデシュだが、案外はっきりした季節の変わり目がある。ミャンマーと国境を接し、難民キャンプが広がる南東部のコックスバザール県は、乾季の1月に異例の寒波に見舞われ(といっても最低気温11~12度程度だが)、2~3月は快適な天候が続いたが、4月半ば以降は空の色が変わり、恐ろしいような雷雨や暴風雨が起きて、いよいよ本格的な雨のシーズンが到来した。
援助関係者が危惧していた事態が現実になったのは5月4日のこと。60万人余りが数キロ四方に密集する通称“メガキャンプ”の中核クトゥパロン難民キャンプで、薪拾いから帰る子どもたち3人が土砂崩れに巻き込まれ、8歳の少女が死亡した。キャンプの子どもたちは裸足で急坂を上り下りし、薪拾いや水汲みに励むのが当たり前の日課である(『ロヒンギャ難民キャンプで会ったドラえもん』参照)。事故の情景がありありと想像できて切ない気持ちになる。
しかし、少女の痛ましい犠牲は大惨事の予兆に過ぎない。「モンスーン期に広大なキャンプの各所で土砂崩れが続発し、数百人規模の死者が出る可能性がある」(国連関係者)からだ。クトゥパロン一帯では昨年8月末以降、押し寄せる数十万人の難民を収容するために丘陵地帯(国有地)1,500ヘクタールを切り開いた。木々を根こそぎ掘り起こし、表土をはぎ取った砂質土の斜面は、ただでさえ崩れやすく、大雨が続けば何が起きるかは容易に想像がつく。
もちろん、バングラデシュ政府も国連機関も手をこまぬいているわけではない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が2月時点で公表したハザードマップ(被害予測地図)によると、メガキャンプでは広範囲の低湿地が洪水で水没し、8万5876人がテントを失うほか、斜面に住む2万3330人が土砂崩れに巻き込まれる恐れがある。
計10万人以上が生命の危険にさらされるだけでなく、周囲が水没して孤立したり、道路が寸断されたりして、食料配給所や診療所にアクセスできなくなるなど、20数万人が深刻な影響を受けると予測される。
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