経済財政白書はもっと日本経済の課題を語れ 伝統ある白書が政権を「忖度」してはいけない

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まずは第1章「景気回復の現状と課題」から。ここはほぼ常識的な線だと思う。

* 2012年末からの回復期間は戦後最長に迫り、GDPギャップはプラスに転じている。
* 家計部門はサービス消費(通信費、外食)が堅調。
* 企業部門では収益が増加しているが、人手不足への対応が急務で、生産性向上が課題。
* 物価は緩やかに上昇しているが、デフレ脱却に向けて賃上げの継続が必要。

個人的には、「高齢者世帯ではネット消費利用率が低いけれども、利用世帯のネット消費額は他の年齢層と大差ない」という指摘を興味深く感じましたな。

「Society 5.0」なんて流行語を使ってみても・・・

第2章で取り上げているのは、「人生100年時代の人材と働き方」という旬の話題だ。AI(人工知能)時代になると、必要とされる業務がどんどん変わっていく。ところが国際的に見て、日本はIT人材の比率が少ない。だからリカレント教育などを通して学び直しを促進することが必要だし、自己啓発をした人は実際に年収も上がってますよ、と指摘している。

ほんの少し前まで、日本企業の教育はOJTが中心で、大学で何を学んだかなんてことはまったく関係なく、業務に必要なことは全部社内で叩きこまれたものだ。ところがAI対応となると社内でも教えられる人が少ないし、ちょっと厳しく接するとすぐ「パワハラ」になる今のご時勢では、教育も外注でということになるのかもしれない。もっともこれは、「何を学習するかは自己責任」という怖い世の中を意味することになるのだが。

そして第3章は「『Society 5.0』に向けた行動変化」である。人類の社会は、①狩猟、②農耕、③工業、④情報と推移してきたが、それがいよいよ第5の時代に移りつつある。ところが日本経済はイノベーションへの適用力が弱い、などと指摘している。

しかし「Society 5.0」なんてBuzz Word(流行語)は、経済産業省の将来ビジョンならともかく、経済を分析する白書としてはいかがなものだろうか。ご丁寧にも、今年の白書には「今、Society 5.0の経済へ」との副題がついている。たぶん好感度は低いと思う。そうでなくとも、AIだのビッグデータだのIoTだのは、昨今は「お腹いっぱい」なんだから。

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