早稲田政経学部長が語る「数学必須化」の狙い 入試改革に込められたメッセージとは?

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――大学入試制度が変われば日本の高校教育にも変化があると考えているようですが、どのような変化が期待されますか。

今回の入試改革のように幅広い学習をしてほしいと思ったのは、私自身が受けた教育にも理由がある。高校2年生に進級するとき、文系に進むか理系に進むか決めさせられた。後で変更したくなっても対応できないうえに、選び方によっては特定の勉強に集中させられる。

大学院改革を進めたい

このような、時間の使い方を制約する進路指導をせざるを得ない状況はよくないと思った。そういう指導を私の子ども世代も受け、45年経っても変わらないことにあぜんとした。理系も国語や社会をおろそかにし、海外で「日本人は教養が足りない」と言われることがあると聞く。

須賀晃一(すが こういち)/1954年大分県生まれ。一橋大学経済学部卒業。一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(経済学)。亜細亜大学助教授、福岡大学教授等を経て、2000年に早稲田大学政治経済学部教授。2014年から現職。専門は厚生経済学・社会的選択理論(撮影:今井康一)

政治経済学部はグローバルリーダーの育成を目標に掲げている。本当のリーダーは、先の見えない世界でどうやって生きていくかを考えながら、答えを探していく人間じゃないといけない。自分の得意な分野だったら周囲をリードし、不得意な分野だったらサポート役として自分の役割をこなしていく。広い視野を持ち、周囲の気持ちを理解できることが求められる。

そのためにも高校では、受験対策で文化祭や体育祭の日程を削り、生徒たちに過度な競争をさせるのは好ましくないのではないか。幅広く学べるときに学び、学校行事にも時間をかけ、豊かな人間関係を築くという、高校3年間だからこそ経験できることをやってほしい。入試制度が高校生らしい学びを阻害した最大の要因だからこそ、制度変更で高校教育の現場も変わることを期待したい。

――今後も改革は続けるのですか。

入試をはじめとした学部改革は継続しつつ、今後は大学院の改革を進めたい。社会の高度化で、学問を深めた高度人材が求められる。「学問を深めすぎて扱いづらい」と大学院修了者は敬遠されてきたが、企業側に必要だと認識されるよう質の高い教育・研究を行う大学院へと改革を進めていく。

私の学術院長としての任期も残り2カ月。これまでの学部改革や入試改革も3代前の学術院長から続いてきたものだ。「停滞は死滅である」という大隈重信の言葉を借りるまでもなく、次の学術院長にも改革は引き継いでもらいたい。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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