あの首長竜を50年前に高校生が発見した必然 フタバスズキリュウ「発見50年」
佐藤:そんななかで、高校生だった鈴木さんはフタバスズキリュウを発見したんですね。
鈴木:中学生のころ、『あぶくま山地東縁のおい立ち』という地元の地質について書かれた本を読んだんです。石炭を採掘するための炭田調査に来られた徳永重康先生が、この地層を「双葉層」と名づけたこともこの本で知りました。
この調査で首長竜や魚竜の歯とされる化石が出たと書かれていて、それがなんと、私の叔母さんの家のすぐ近くだったんです。毎年、夏休みに泊りがけで遊んでいた川のそば。それからは化石を採ったり、地質学の専門誌を読んだりするマニアックな高校生になりました。
佐藤:双葉層群の研究には、本当に長い歴史があるんですよね。かつては新生代の地層として知られていたのを、徳永先生がアンモナイトや二枚貝化石の調査で、中生代の地層があると明らかにされた。
鈴木:そうですね。それである日、地質学雑誌に載っていた「白亜系双葉層群の上限」という論文を目にしたんです。著者は小畠郁生先生でした。読んでみると、アンモナイトや貝、サメの歯など、私が採取したのと同じようなものが並んでいる。いっぱしの学者気取りで「私の調査ではこんなものが出ています」と手紙を送りました。生意気な高校生ですよね(笑)。
佐藤:ははは。
高校生の手紙に対して「一緒に研究しましょう」
鈴木:驚いたのは、小畠先生のお返事です。どこの誰ともわからない高校生のぶしつけな手紙に対して「一緒に研究しましょう」とおっしゃってくださいました。このお返事が、フタバスズキリュウの発見につながるんです。調査をするなかで骨を見つけて、大型の海生爬虫類に違いないと確信して小畠先生に速達郵便を送ったことから本格的な発掘調査が始まりました。小畠先生の書かれた本や論文がなければ、私がこの世界に興味を持つことはなかったかもしれませんし、フタバスズキリュウの発見もなかっただろうと思います。
フタバスズキリュウをきちんと記載してくださった佐藤先生の功績もとても大きなものです。新属新種ではないかという長年の問いにも決着をつけてくださいました。
佐藤:それまで日本では新種の首長竜は記載されていなかったんですが、多くの首長竜が記載されているアメリカとは地理的に離れていますし、種類の違う首長竜が太平洋を隔てた日本にいてもおかしくないのではないかという感覚はあって。博士課程の研究で(フタバスズキリュウを含む)エラスモサウルス類のデータを集めていたことも大きかったですね。