過去50年で8月の平均気温は2度以上上昇しているが、過酷な夏の大会の試合環境も進歩している。甲子園では、ダッグアウトにもエアコンが設置されており、背面といすの間から冷気が出るようになっている。
選手たちはイニングの変わり目には短時間だが涼むことができる。また給水も頻繁に行うようになっている。
急病人の応急処置や注意喚起にあたる医師団や医療スタッフとは別に、1995年より理学療法士がコンディションケアといった大会支援だけでなく、試合中の選手の様子を観察し補水やクーリングを促すなど選手たちへの熱中症対策に取り組んできた。
日刊スポーツの報道によれば、8月4日に日本高野連は応援団および観客向けの熱中症対策を発表した。試合中のアルプススタンドに定期的に水を撒くことや、各入場門などに扇風機を設置し、温度の上昇を和らげる対策を講じている。
また、大会2日目の8月6日第3試合、沖学園(南福岡)―北照(南北海道)では両チームの選手が一度全員ベンチに下がり水分補給をとるシーンもあった。今大会では、熱中症対策として、試合中でもバックネット裏本部委員の判断で、給水・休憩の時間を取ることができる措置がとられている(朝日新聞デジタル)。
とはいえ、明確なガイドラインに沿って滞りない大会運営や選手の安全を確保する措置を講じているわけではない。
ちなみに公益財団法人日本サッカー協会は2016年3月に下記のガイドラインを出している。
『JFA 熱中症対策』は10項目からなり、具体的に設置すべき施設や準備体制を定めている。
高野連、学生野球連盟も同様のガイドラインを出す必要があるのではないか。
高まる「甲子園熱」が野球少年の健康被害を生む
日本と同じくアマチュア野球が盛んなドミニカ共和国では対照的だ。
今年7月、以前コラムで紹介した堺ビッグボーイズなどで野球指導をする阪長友仁氏が『高校球児に伝えたい! ラテンアメリカ式メジャー直結練習法』という本を刊行した。
ドミニカ共和国と日本の育成システムの違い、子どもたちに対する接し方の違いから、攻守にわたる具体的な技術論、さらには子どもへの接し方、日本の少年野球の現場への導入の方法論までが、具体的に解説されている。
ドミニカ共和国には甲子園のような18歳をピークとする大きな大会はない。子どもは最初からメジャーリーガーになりたいと思っている。
そこから逆算して、技術やメンタルを学んでいくが、指導者は、その選手が「まず、最初に野球を好きになれるかどうか」を重視している。それがないと、技術を磨いたり、激しい競争の中で力を発揮したりすることもできない。そして「野球を好きになって、長く野球を楽しむ子どもを育成すること」が、子どもの幸福にも、野球界の発展にもつながっていく。
「甲子園」を頂点とする日本のアマチュア野球に対する強烈なアンチテーゼを提示したと筆者は感じている。
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