教科書すら読めない人を襲う「AI失業」の恐怖

計算が得意な機械に勝つには読解力が必須だ

これは、全国に172校ある国公立大学のうち23大学の30学部53学科で合格可能性80%、584校ある私立大学(短期大学を除く)中、512大学の1343学部2993学科で合格可能性80%という実力となる。

なかにはMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)や関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)など首都圏や関西の難関私立大学の一部の学科も含まれていたのだとか。

このような話を聞くと、いかにもAIには大きな可能性がありそうで、今後もその能力を高めていきそうにも思える。しかし、残念ながらそうではないようだ。なぜなら前述したように、コンピュータは計算機だからである。

AIは意味を理解しているわけではありません。AIは入力に応じて「計算」し、答を出力しているに過ぎません。AIの目覚ましい発達に目が眩んで忘れている方も多いと思いますが、コンピューターは計算機なのです。計算機ですから、できることは基本的には四則計算だけです。AIには、意味を理解できる仕組みが入っているわけではなくて、あくまでも、「あたかも意味を理解しているようなふり」をしているのです。しかも、使っているのは足し算と掛け算だけです。
AI(コンピューター)が計算機であるということは、AIには計算できないこと、基本的には、足し算と掛け算の式に翻訳できないことは処理できないことを意味します。(107〜108ページより)

たとえば「東ロボくん」は、数学に関しては東大医学部に合格できるレベルに達しており、世界史でも相応の成果が見られるという。ところがその反面、英語や国語の偏差値は50付近なのだそうだ。理由は明白。計算機だからである。計算機である以上、決められた範囲内でしか計算処理ができないため、英語や国語に必要な「応用」が効かないのである。

日本人の決定的な教科書読解力の不足

だとすれば、たしかにシンギュラリティが訪れたとしても人間には問題がないように思える。が、新井氏はそうした楽観論を否定する。しかも問題点はコンピュータにあるのではなく、注目すべきは「AIにできない仕事」をする能力が人間から失われつつあること。すなわち、「読解力」を基盤とする、コミュニケーション能力や理解力がない層が増えているという事実である。

新井氏は東ロボくんの勉強をもとに開発した「リーディングスキルテスト(RST)」を開発し、その結果を公表することによって、いかに「危機的な状況」であるかを具体的に解説している。そのすべてをここで明かすことは不可能だが、下記の「まとめ」を確認するだけでも、インパクトの大きさは伝わるだろう。

全国2万5000人を対象に実施した読解力調査でわかったことをまとめてみます。
・中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない
・学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない
・進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%程度である
・読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い
・読解能力値は中学生の間は平均的には向上する
・読解能力値は高校では向上していない
・読解能力値と家庭の経済状況には負の相関がある
・通塾の有無と読解能力値は無関係
・読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関はない
(227〜228ページより)
次ページこれがなにを意味するか…
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