日本企業もサッカー日本代表の監督選びと同様、次世代の経営を担う幹部人材を登用するときに「目の届く範囲」「勝手知る」中から選ぶ傾向があります。会社の役員に対してどれだけ名前を覚えてもらっているか、その仕事ぶりを知ってもらっているか、にかかってしまう。まったく無能な人材を登用するわけではありませんが、
「同じ会社の部下たちでも面識がない人物を幹部に登用することは考えがたい」
ということになるのです。なかには些細な対面の場面の言動や行動だけで「あいつは優秀だ」との評価を得てしまうこともあるようです。知人である不動産会社の幹部になった人物は同僚の披露宴でのスピーチを聞いた役員が
「なかなかしっかりしたことを言える人物だ。将来が嘱望される」
と傍に呼び、酒を飲みながらの初対面。その対面をきっかけに幹部に登用されたのでは……と話してくれました。ちなみに筆者がある会社の幹部登用を決める会議に参加したときに
「この●●くんという人物は面識がないから推薦はできないよ」
と数名の役員が「知らない」「だからダメ」とのコメントで抜擢がされなかった場面に遭遇したことがあります。重要な選考なので、自分が知らない人では検討しようがないというのはわからなくはないのですが、幹部になるような人物は自分の守備範囲にいるはずだと信じ、それ以外を排除しているとしたら、大変もったいないことです。
大企業でも「知らないから抜擢しない」が起きている
ちなみにこの会社は中堅クラスの規模でしたが、同様に「知らないから抜擢しない」というような選考は大企業でも起きています。といいますか、むしろ大企業ほど人材は全国規模で点在しており、本社の経営陣からすれば知らない幹部候補が、各地に山のように埋もれている可能性があります。
筆者はかつて従業員が1万人を超える大企業で、本社勤務が1回もない、役員との接触機会も限られた職場に長く勤務していました。本社でないところで、幹部としての活躍の可能性を感じる人材に遭遇したことは何回もあります。ただ、残念ながら幹部候補への抜擢はされないケースが大半。
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