「経営陣の近場人材」ばかりが出世する不条理 サッカー日本代表監督の選考だけではない

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ある一人がつぶやいた言葉を今でも覚えています。「自分は本社の人からすれば誰も知らない存在ですから、(登用されなくても)仕方ないですよ」と肩を落として言うのです。実際、本社の役員からすれば「知らない」存在で、候補にもならなかった気がします。幹部を選ぶのが本社役員の守備範囲までであるがゆえの、残念な出来事に見えました。

でも、幹部を選ぶ人たちの守備範囲だけで選考を行っていいのでしょうか? いいわけがありません。経営幹部の近くにはいないだけで、社内に逸材がいる可能性はおおいにあります。力があるにもかかわらず、たまたま経営層の近くにおらず、埋もれた人材。そんな人がくすぶらないために、経営陣は幹部候補をもっと広い範囲で探すべきです。自分に近づいてくる人物や、たまたま縁があった人物だけでなく、接触機会を広く設けるべきでしょう。

「仕事ぶり」がわかるようにすることが大事

そうした可能性を広げるため、社内の幹部候補人材の「見える化」を実現するシステムを導入する企業が増えています。HRテックにおけるタレントマネジメントと呼ばれるサービスの活用ですが、大事なことは幹部候補の「仕事ぶり」がよくわかるようにすること。

取得した資格やスキルに加えて、取り組んだプロジェクトと成果、また部下等からの評価。これまで関わりがなくても仕事ぶりがわかるようにプロファイルを残しておくことが重要です。最近はクラウドで費用対効果の高いサービスが続々と登場しています。たとえば、プラスアルファ・コンサルティングが開発したタレントパレットというサービス。これは、社員の仕事ぶりを柔軟に残しておけるだけでなく、無料で利用できる適正テストなどを用いて「社交性」や「協調性」、「環境順応性」といった性格・タイプを、科学的アプローチから8つの座標軸で適性判断することができます。こうした機能を活用して、適任な幹部候補の発掘を進めたいものです。

また、HRテックに頼るだけでなく幹部人材を発掘するためのイベントを行うことも有効でしょう。たとえば、役員が担当部門を越えた形で行うプロジェクトを必ず担当するということ。それにより、広く幹部候補との接触機会を増やそうとする会社が増えています。業務改善や新規事業の立ち上げなど、会社が抱える課題の解決を部門横断で取り組む機会を創出。そのプロジェクトにおいて新たな幹部候補との出会いが生まれることが期待されているということです。

そもそも、組織横断のプロジェクトは縦割り組織で生まれる弊害を払拭する効果があります。各社が果敢に取り組む傾向が出ていますが、新たな幹部候補の発掘という「副次的な効果」も期待できるこは会社にとって有益です。いずれにしても幹部候補を「目の届く範囲」で「勝手知る」対象だけで選ばないように仕向けること。競争の厳しい時代、このことがますます重要になっていくのではないでしょうか。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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