「生涯学習」がドイツで無理なく根付く理由 コミュニティカレッジが「街力」を強くする

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「職業」のプログラムはPCの基本操作の学習やプログラミング技術の取得、写真撮影・デザイン、ビジネスのスタートアップなど、職能をつけたり、向上させる内容となっている。『教育が職業に直結、ドイツ社会の「雇用哲学」』でも触れたが、ドイツにおいて職業教育と雇用はかなり密接だ。就職してからも「継続教育」というかたちで職能を向上させていくが、そういうシステムの一端でもある。

「言語」のプログラムについては、ドイツに移住した外国人向けの「ドイツ語講座」が日本でよく紹介されているが、それ以外にも英語、フランス語、アラビア語、そして日本語など27の言語が学べる。ほかにもヨガやリラクゼーション、水泳、ダンスなどのほか、異文化理解のワークショップやコミュニケーションイベントなども多い。

市街地の歴史的建築物が校舎。中庭にはカフェも併設されている(筆者撮影)

教室などがある建物も魅力的だ。アクセスのよい市街中心にある、歴史的な建物が使われている。カタカナの「口」のような形の構造で、中庭にはカフェもあり、多くの人々が行き交う。

平日の午前中は言語関係の講座が多いが、カフェではお喋りに花を咲かせたり、自主的な勉強会をする人たちもいる。キャンパスそのものだ。ちなみにカプチーノが150円程度。経済基盤がまだしっかりしていない外国人にとっても手に届きやすい値段だ。

地方都市でのデモクラシー教育を担っている

さらに文学や演劇、映画関係の講演会などが行われるほか、硬派な講義や講演も多い。2018年のプログラムを見ると、たとえば哲学や文化の歴史に着目した「21世紀の生命と愛」と題したものや、ドイツの戦後史、核兵器に着目した政治の話題、社会システム理論で知られるニクラス・ルーマンについてのほか、アリストテレスやカントなども扱う。あるいは、同市の「都市計画大臣」に相当するポジションの人物を招いて、自治体の都市計画についての講演など、地域の課題も扱う。

これらは教育プログラムの「社会」分野のものだが、年間150以上の無料講演を開催している。今後もより充実させる方針だ。というのも、コミュニティ・カレッジの役割のひとつが「政治教育」。政治トピックに対する批判的検討、そして社会への参加能力を高め、促進していくのが狙いだ。そのためには現代の社会で起こっていることや、歴史を知る必要がある。コミュニティ・カレッジの源流は18世紀末に見られるが、本格化するのは19世紀末から。啓発と普遍的な人権の原則に基づいている。これが「政治教育」にも引き継がれているわけだ。

新しい学期が始まるときは、積極的に町へもでかけ、通行人にアピール(筆者撮影)

しかし「ドイツの小学生が「デモの手順」を学ぶ理由」でも述べたように、ドイツは公教育でもデモクラシーに基づいた政治教育が展開されている。

またエアランゲン市の社会構造は少し特殊で、広い視野と知識を得た教養の高い層が多い。そんな町でも、なお成人向けに「政治教育」は必要なのだろうか?

それに対して同コミュニティ・カレッジの校長、マークス・バッセンホルストさんはこういう。「この街にも、あらゆる社会階層の人々がいる。コミュニティ・カレッジは誰でもアクセスできるよう努めなければいけない」。

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