日本建築は今も木造の伝統を受け継いでいる ヨーロッパの「石造」建築とは対照的だ
――木造建築の継承以外に日本の現代建築の特質はありますか。
SANAA(妹島和世+西沢立衛)の二人は自由な造形で注目されています。床が斜めになっていたり、建物全体が水滴のような丸い形をしていたりする。そういったことができるのは薄さ、軽さ、透明さという日本建築の特質を受け継いでいるからだと思います。
隈研吾さんの建築にも自由さがありますが、SANAAとはまた少し違う“微分した造形”なんですね。部材のサイズを小さくしていくことでいろんな矛盾を解決しようとする。本来は混ざり合わない水と油に仲介するものを入れ、高速回転させて乳化させるような感じです。
建築展が人気の理由は?
――この展覧会に限らず、建築展は海外でも日本でも人気です。なぜだと思われますか?
日本では、建築は住宅という日常の延長であり、インテリア・住宅雑誌に親しんできた層にとってはとくに親しみやすいものなのでしょう。一方ヨーロッパでは、建築は美術と同じような教養の一つです。ルネサンス期には絵画や彫刻の上に立つものとして位置づけられていました。バウハウスでもあらゆる造形活動のおおもとが建築だとされています。
中でも日本の現代建築は近年とくに注目されています。海外で日本の建築展があるとお客さんがたくさん来る。ヨーロッパとは違う遺伝子を持ち、独自の進化を遂げてきた日本の建築は世界でも類のないものとして大きな興味を持たれているのです。
(文:Naoko Aono)