世界最強「グーグル検索」が背負う期待と責任

業界随一「検索ウォッチャー」を採用した理由

――サリバンさんが執筆した過去の記事は、白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」に所属していた過去のアメリカ大統領を検索すると、明確な根拠がないまま強調スニペットに複数の名前が出てくるという問題を指摘していました。グーグルホームなどでは強調スニペットの機能を使って回答しており、一層の正確性が求められています。

すべてではないが、「グーグルアシスタント」(グーグルが開発した音声AI<人工知能>)による回答では強調スニペットの情報が使われている。スピーカーから不快な回答が流れてくれば、それは恐ろしいことだ。だからこそ、正しく機能するようにアルゴリズムの改善を続けている。KKKに所属した大統領が誰なのかといった具体的な情報を求めているときには、(ウェブ上にある情報が)信頼できるものなのか見極めなければならない。

グーグル検索で「クー・クラックス・クランにいた大統領」と入力すると、明確な根拠なく過去の大統領の名前が出てくることがあった(画像:ダニー・サリバン氏の過去記事をキャプチャ)

たとえば、グーグルホームに「イエス・キリストとは誰?(Who is Jesus Christ?)」という質問をした人がいた。するとスピーカーは「今はそれに関してお助けできません(I can't help you with that right now.)」と答えた。それなのに、「ムハンマドとは誰?」「ブッダとは誰?」という質問には答えた。

グーグルの“答え”が批判の標的に

「グーグルはイエス・キリストを嫌っているのか」という解釈もあったが、(キリスト教に対する)軽視の意味ではなく、むしろ配慮から来ている。情報源として使っているウィキペディアは「荒らし」に遭うことが多く、場合によっては「イエスは架空の生き物です」と返してしまう可能性も否定できない。だからシステムがそういう状況を自動検知し、イエス・キリストに関する回答をしないようにした。だが、ほかの(宗教の)ケースでは荒らしを検知していなかったため、回答を止めていなかった。最終的にポリシーとしては、よりよい方法が見つかるまで、音声検索では宗教のトピックを無効にした。

システムは完璧ではない。それゆえ、慎重に扱うべき分野の情報にどう対処するかというポリシーを持っている。音声検索に関しては、より厳しいポリシーを適用していく必要があるだろう。

ダニー・サリバン(Danny Sullivan)/ グーグル検索部門のパブリック・リエゾン。2017年に同社入社。ロサンゼルス・タイムズなどの新聞社で記者として経験を積んだ後、1996年に検索エンジン専門メディア「サーチ・エンジン・ウォッチ」を立ち上げ、2006年に「サーチ・エンジン・ランド」を創刊。検索エンジンやSEO(検索エンジン最適化)の仕組みに詳しい(撮影:今 祥雄)

――検索が進化する中で、単にウェブサイトを調べるだけでなく、動画やニュース、商品、店舗やレストランなども、グーグルで簡単に調べられるようになりました。一方で競合する業者からは、グーグルの展開する自社サービスが検索結果で優遇されているという声も上がっています。これについてはどう考えていますか。

確かにグーグルに入社するまでは、私もその点に批判的だったし、理解できない部分があった。だが中に入ってみて感じたのは、ユーザーはフライト情報など、より具体的な情報がわかるような検索体験を求めているということだ。

情報というのはさまざまなフォーマットになる。単なるリンクだけではない。そのうえで、情報がグーグルではないほかのエコシステムから来るものであれば、そうしたエコシステムを支援する責務がある。共生する関係にあるからだ。すべてのユーザーをグーグルに来させて、そこからどこにも行かせないというのは、われわれの意図するところではない。

たとえばグーグルはニュースサイトにお金を払うべきだという批判をよく聞くと思うが、サイト側がグーグルから得ているトラフィック(ユーザーの訪問・閲覧)がどれほどのものか、(グーグルがなければ)そのトラフィックを得るためのコストがどれほど抑えられたかということは聞かないだろう。昔だったら、莫大な宣伝コストがかかっていたはずだ。サイトの所有者たちがこのエコシステムの中で成功すると確かに感じてくれるようにしていきたい。

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