粗悪サプリに潜む健康被害の知られざる恐怖 「薬」と「食品」の違いから理解しておこう

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それ以外のサプリメントは「健康に良い」と謳っているものの、定のはたらきの表示が国によって認められていない「食品」と判断する。たとえば「栄養補助食品」「健康補助食品」「栄養調整食品」と呼ばれる製品などがこれに該当する。

サプリメントの大まかな分類と特長をつかむと、製品選びのときに自分なりにどこに信頼をおくか、ポイントがわかってくるのではないだろうか。

次のステップとして広告表現にも注意を払いたい。ウェブサイトや雑誌の広告でよく目にする「個人の感想」といった表示は、消費者を誤解させる可能性があるとして、消費者庁から厳しい対処を受けるようになった。

それにもかかわらず、今もなおこういった表示をして売り込もうとするサプリメントがあったとしたら、厳しい目を向けるべきだろう。

食品サプリによる健康被害に遭わないために

医薬品としてのサプリメントは処方された医薬品でも、自分で購入した市販薬でも正しく使っていたのに入院治療が必要になるほどの重篤な副作用が生じた場合は、医療費や年金などの給付を受けられる「医薬品副作用被害救済制度」が利用できる。ところが、食品としてのサプリメントの場合は、万が一健康被害を受けても制度を利用することができない。だから、自分で身を守ることが重要になる。

医薬品と食品にはこうした違いもあることを踏まえ、特に「食品としてのサプリメント」を安全に活用するために知っておきたい3つのポイントをおさえておこう。

1つ目は、食品としてのサプリメントは医薬品とは異なり、品質にバラつきがみられるおそれがあること。2つ目は食品だから安全というわけではないこと。3つ目として成分が濃縮されているため過剰摂取になる場合もあり得るということだ。

2003年に「アマメシバ」という植物のダイエット用サプリメントや健康食品で3人に呼吸困難などの健康被害が起こり、食品衛生法第4条の2第2項の規定に基づき暫定的に販売が禁止された。

アマメシバは東南アジア地域に生育する植物だ。それまで野菜として食用されていたが、サプリメントのように大量に長期間摂取するという使われ方はされていなかった。被害に遭った3人はいずれも半年ほどアマメシバ加工品を摂取し続けていた。食卓に上っていたときには問題なく摂取できた食品でも、成分が濃縮されたサプリメントという形になり、摂取を続けると思いがけない健康被害を起こすことがある。

食品としてのサプリメントには、こうした気をつけたいポイントがある。加工した食べ物だから安心・安全だとは限らないと心に留めながら適正に活用したい。困ったことがあったら薬剤師などの身近な専門家を頼ってほしい。

高垣 育 薬剤師ライター、国際中医専門員

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たかがき いく / Iku Takagaki

2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。毎週100人ほどの患者さんと対話する薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。

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