要注意!その「親心」が子どもの発想力を奪う 人材育成のプロが教える「3つの落とし穴」

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なので娘たちは、週末前になると週末の予定を自ら作るべく、あたふた動いていました。友だちに電話したり、親戚に電話したり、手帳を確認したり。放っておくと週末、あまりにヒマになるからです。習いごとは週に1回しかありませんし、親は頼りになりません。自分で、なにか遊びを考えるしかないのです。次女は言います。「ちっちゃいとき、毎日どうやってヒマを潰すか必死だった」。

「土日に子どもがヒマな状態を放置しているなんてかわいそう」と思う方もいるかもしれませんが、私の考えはむしろ逆。できるだけ子どもを「ヒマ」にしてあげようとしていました。

ヒトをほかの動物と区別する行為のひとつが「遊び」です。もし、生命維持に必要な活動以外の活動をすべて「遊び」とするのなら、ヒトの活動のほとんどは遊びと言えるでしょう。

遊び研究の先駆であり代表者である歴史家のヨハン・ホイジンガは、言いました。「遊びは遊びのためにある」「遊びはヒトの本質である」と。彼の著作の題名は『ホモ・ルーデンス(Homo Ludens)』。遊ぶヒト、という意味です。現生人類ホモ・サピエンス(Homo Sapiens)、は、考えるヒト、知恵あるヒトという意味ですが、彼はそれに対して、考えるだけでなく、遊ぶということ自体がヒトがヒトたるゆえんなのだ、と主張したのです。学問もスポーツも遊びだ、政治や戦争すらある意味でそうだ、と。

ホイジンガによると、「遊びとは自由な独立した行動である。強制されるものではなく、何かのために行うものでもない。ゆえにその第一条件は、ヒトにヒマ(=自由な時間)があることである」とのこと。

ヒトが最大限の創造性を発揮し、熱意を持つのはまさに遊びの領域においてでしょう。それがいわゆる仕事であっても勉強であっても、同じです。逆に言えば、子ども時代の遊びが、創造性の訓練としていかに重要かということでもあります。

そして子どもたちが存分に「遊ぶ」ための条件が、ヒマ(自由な時間)なのです。

子どものヒマを埋め尽くす塾とケータイ

ベネッセの調査(2017年)では、小学生のほとんどがスポーツや芸術系の習いごと、塾通いに勤しんでいます。スポーツ系では水泳(34%が定期参加)、芸術系では音楽(同21%)、学習系では習字(同12%)とそろばん(同8%)が昔から変わらぬ主な人気種目です。ただ、新たに上がってきたのが英語です。なんと15%の小学生が英会話教室に通っています。

習いごとを始めたきっかけの半数は親の薦めであり、子ども自身が望んだのは37%にすぎません。運動に、音楽に、語学にと、子どもたちはとっても忙しいのです。

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