「親の延命治療」に苦悩した人の偽らざる本音

「なんでもしてください」は本当の愛情なのか

高齢者の医療・ケアや延命医療に詳しい東京大学大学院の会田薫子特任教授は、「日本社会では自分の親に『できることはなんでもしてあげてください』と答えるのがあたかも愛情を持つ家族のようにとらえられているが、これは本当の愛情なのか」と指摘する。

離れて暮らす親がどんな日常を過ごしているか。子どもはどれだけ知っているだろうか(写真はイメージ、撮影:今井 康一)

そして前出の会田氏は、「大事なのは、『今もし父が話せたら、何と言うだろうか』という観点に立って、医師と話し合うこと。医師に最初に伝えるべきは、子ども自身が親にどういう措置をしてあげたいかではない。親と自分の希望を区別できない家族は多い」と話す。

終末期の医療において、自(子ども)他(親)の区別は重要なポイントだが、もうひとつ、きょうだいと意見が食い違うという別の問題もある。「本人の最期の考えは普段から聞き、あらかじめ書面にまとめていた。ところが、最期になって同居していない妹が延命治療を強く希望し、説得に苦労した」(50代 男性 東京都)というのが典型的なケースだ。

千葉県内のクリニックに勤め、高齢者を看取る機会が多いある医師は、「最期が迫ったときにかけつけた子どもが、『なぜこの医者は治療もしてくれないの!』と、これまでに話し合って決めた方針を覆そうとすることがよくある。遠方から駆けつけることから”カリフォルニア娘”と呼ばれる」と話す。この言葉は、本特集の取材過程で医療関係者や介護関係者など複数が口にした。

カリフォルニア娘をどう説得するか

同居していたり、日常の介護をしていたりする子どもは、親が終末期に至るプロセスを目にすることで覚悟をかためていく。一方、元気だった頃のイメージが強い”カリフォルニア娘”は、駆けつけて衰弱しきった親を見て驚き、「なんでもしてください」と医師に詰め寄るのだろう。

こうした事態も想定し、親と話し合った内容をノートや書面に残しておくと、説得材料になる。また、土壇場でもめないようにするためにも、遠方で暮らすきょうだいには、親の容体をこまめに知らせることが重要だろう。

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