「親の延命治療」に苦悩した人の偽らざる本音

「なんでもしてください」は本当の愛情なのか

厚生労働省は今年3月、「高齢多死社会の進展に伴い、地域包括ケアの構築に対応する必要がある」として、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」と称する指針を公表した。これは2007年に策定した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を初めて改訂したものだ。

両親が考える人生の最期で大切にしたいことは何か。そんなことを親子の会話で話題にしたことはあるだろうか(写真はイメージ、撮影:今井 康一)

新たな指針では「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の重要性が強調されている。ACPは欧米で取り組みが普及してきている概念で、重篤な病気になる前から、医療・ケアの方針やどのような生き方を望むかなどを本人と家族等(医療、介護関係者も含む)が話し合うことだ。

メルマガアンケートでは「(元気な親と)話し合ったところで、その場面にならないと結論は出ない。事前の話し合いは机上の空論」(50代 男性 北海道)という意見があった。

しかし、実際に親を看取った人からは「認知症が急激に進んでしまったので、本人の意思が不明確だった」(40代 男性 神奈川県)、「父は老人ホームで元気に過ごしていたが突然、肺炎で緊急入院。ただの肺炎かと思ったら誤嚥性肺炎であっという間に人工呼吸器を装着され、医療に関して本人の意思確認ができなかった。元気なので油断していたが高齢者は容体が急変するリスクがあることを想定していなかった」(60代 男性 千葉県)という声もある。

価値観や人生観を元気なうちに聞いておこう

緩和医療を専門とし、ACPに詳しい神戸大学の木澤義之特命教授は、「健康なときは本人の意識も変わる。そのため、まず聞いておくといいのは価値観や人生観といった、病気になってからでも元気なときと大きく変わらないこと」と解説する。こうしたことを聞いておくだけでも、万が一、本人の意思がわからなくなった場合、最終段階の医療やケアについて医師と家族で落としどころを考えるときの有力な材料になる。

厚労省の調査(「人生の最終段階における医療に関する意識調査」)によれば、ACPについて賛成と答えた人は64.9%を占めた。だが冒頭のメルマガアンケートの結果で示したとおり、実際に親子で詳しく話し合っている人はごく僅かだ。

一度もそうした話をしたことがない人は、お盆や法事などで家族が集まったとき、「おじいちゃんのときはこうだったね」と言って振り返り、親の胸の内をそれとなく聞いて見る手もあるだろう。誰にでも最期は必ず訪れる、帰省の機会にでも少し話題にしてみてはどうだろうか。

『週刊東洋経済』8月4日号(7月30日発売号)の特集は「親の看取り方」です。
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