人は太るとどうして病気になってしまうのか 内臓脂肪の炎症反応と「異所性脂肪」の存在
内臓脂肪はより「悪玉」
最近の健康診断では腹部周囲の長さ(ウエスト周囲長)を測るようになったことをご存じの方も多いと思います。
健康診断では、へそのところの腹囲を測定し、男性では85センチメートル以上が、女性では90センチメートル以上が要注意とされています。この腹囲の測定は、「内臓脂肪量」を推定するために行われています。
ここで、なぜ最近になって内臓脂肪量を問題にするようになったかをお話ししましょう。
以前の肥満研究においては、体内の脂肪蓄積量、あるいは体全体の脂肪蓄積率が重視されていました。しかし、研究が進むにしたがって、たとえば相撲取りのように脂肪蓄積量が多くても、糖尿病や高血圧、高脂血症(脂質異常症)を起こさない人がいる一方で、脂肪蓄積量が多くないのにもかかわらず、それらの疾患にかかる人が多くいることが分かってきました。
その結果、脂肪組織には質的な違いがあって、それが単なる脂肪蓄積量よりも重要ではないかと考えられるようになったのです。
この脂肪組織の質の違いを明らかにする上では、1980年頃に普及し始めた「X線CT装置」が大きな役割を果たしました。X線CT装置によって人体の断面像が得られるため、皮下脂肪と内臓脂肪を分けて計測することが可能になったのです。
その結果、肥満には皮下脂肪がたくさんつく「皮下脂肪型肥満」と、内臓脂肪がたくさんつく「内臓脂肪型肥満」の2つのパターンがあることが分かりました。相撲取りは皮下脂肪型肥満の典型例です。
さらに研究が進むにつれ、皮下脂肪型肥満に比べて内臓脂肪型肥満では、糖尿病や高血圧、高脂血症(脂質異常症)などの発症リスクが著しく高くなることが明らかになりました。すなわち、皮下脂肪よりも内臓脂肪は「より悪玉」の脂肪であることが分かったのです。
しかし、X線CT装置を用いた検査はかなり大がかりになるため、通常の健診で使用するのには問題があります。そこで、内臓脂肪量を簡便に知るための調査方法が検討されました。
その結果、腹囲長が内臓脂肪量と相関性が高いことが分かったのです。また、メタボリックシンドロームは、男性で85センチメートル以上、女性で90センチメートル以上の腹囲を持つと起こりやすくなるため、これらを基準値として使用することになりました。
一般的に、尻や太ももに脂肪がつく皮下脂肪型肥満は女性に多く、一方、腹部がはち切れるように脂肪がつく内臓脂肪型肥満は男性に多く見られます。これは、女性ホルモンの働きにより、女性では内臓脂肪よりも皮下脂肪に中性脂肪をためやすいからです。このため、女性の腹囲長の基準値は、皮下脂肪が多い分だけ男性よりも大きくなっています。
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