量的緩和のやりすぎは、日本人を不幸にする カビ臭い経済理論を実践する、安倍政権の罪

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グローバル経済下では、「所得の上昇→消費の拡大→物価の上昇」というプロセスは成り立ちますが、安倍政権が想定する「物価の上昇→所得の上昇→消費の拡大」という従来のカビ臭い経済理論は成り立ちません。実は、長くインフレ経済下にあるアメリカや欧州でも、リーマンショック以前からすでにこの好循環が成り立っていません。

経済学では机上の空論が多く、その机上の空論が国の経済政策や金融政策を動かしている例が少なくありません。それは、物事の本質から見ると完全に間違っているにもかかわらず、権威のある経済学者の持論が経済政策や金融政策に反映されてしまうからなのです。今の日本が、まさにその状況に当てはまってしまっています。

戦後最長景気下でも、サラリーマンの給与は横ばい

過去30年間で世界的に最も景気が良いと言われていた05年~07年の3年間を思い出してください。この3年間であっても、日本の名目経済成長率は平均して1.3%しか増えなかったばかりか、給与所得者の平均年収は横ばいで推移するのが精一杯で、ついに増加に転じることはありませんでした。さらに、戦後最長景気と言われた02年1月~08年2月までの6年1カ月の間、すなわち02年~07年の6年間で見ると、名目経済成長率はわずか0.6%に低下し、平均年収は2.4%も下がってしまっているのです。

その一方で、大企業は通貨安の恩恵をフルに享受し、04年から07年まで4期連続で上場企業は史上最高益を更新しました。しかしながら、大企業の社員といえども、史上最高益に見合った所得の増加を得ることができたとはとても言えない状況でした。当然、中小零細企業の社員にいたっては所得が減少の一途をたどっていくこととなりました。つまり、大企業に勤める人々と、それ以外の人々との格差が拡大してしまったと言えるのです。

ここで疑問として残るのが、05年~07年の間に世界経済が史上空前の絶頂期であった中で、どうして国民の所得は増えなかったのでしょうか。どうして大幅な通貨安が進んだはずなのに、その間の物価上昇率が0.3%程度で済んだのでしょうか。

これは、ただでさえ世界的に原油などのエネルギー価格が右肩上がりで上昇していた時期に、大幅に円安が進んでしまったことで日本が輸入するエネルギー価格がさらに急騰してしまったことに起因しています。企業は売上げが伸びても、将来のエネルギー価格の上昇基調に備えて、所得のアップにまわすはずのお金を出し渋ってしまったのです。別の言い方をすれば、企業がエネルギー価格の高騰分をモノの価格に転嫁せずに、人件費を削るほうに重きを置いた経営を行ったから、とも言えるのです。

これは、戦後続いてきた「景気の拡大=所得の上昇」あるいは「企業収益の拡大=所得の上昇」という関係が、エネルギー価格の高騰によって成り立たなくなったことを意味しています。もはや、通貨安によって景気が良くなるという考え方は、国民生活の視点から見ると楽観的すぎるという現実があります。

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