夏の風物詩「打ち上げ花火」の知られざる世界

打ち上げも手持ちも中国製が過半の実態

打ち上げ花火の製造は手作業が主流で、家内工業のようなところがほとんど。従業員は多くても15~20人程度。「花火製造工場と呼ばれるけれども、実際は“工房”といったほうが正しいくらいの規模」(ある製造業者)。天候不順による大会中止リスクなどはあるものの、「危険物を扱うこともあり、新規参入は少ない。利益もある程度出る」(同)という。

花火の美しさと観客の歓声に魅せられて、職人として働くことを希望する人もいるかもしれない。「業界の将来を担えるような人たちに門戸を開き、どう育成するかは、きちんと取り組んでいかないといけない」(花火ショーの企画・演出を行う丸玉屋<東京・日本橋>の小勝敏克社長)。

現状は「火薬を持ち出されるなどしないよう、変な人に来てほしくないということもあり、新しく雇うのは現従業員の親戚などが多い」(花火業界に詳しい冴木一馬カメラマン)。特に製造現場に関しては、経験も縁もまったくない人が入るのはまだ難しい世界のようだ。

加えて工場を拡張しづらいという事情もある。花火工場は火薬を扱うため、万が一爆発事故が起こったときに備え、一定の広さの土地を確保しなければならない。宅地化の進展で移転せざるをえなくなるなど、土地確保の問題は打ち上げ花火製造業者が少しずつ減っている理由の1つとされている。

生産量ナンバーワンは中国

夏の風物詩の花火も、安価であることや国内での製造が追いつかないことなどから「日本で打ち上がる花火も半数ほどは中国製ではないか」(日本煙火協会)。

金額で見ると、国内の打ち上げ花火生産額は2016年に49億円(経済産業省)、輸入額は同年に16億円(財務省貿易統計)だった。日本の職人技が光る大玉に比べ、4号(直径約11.5センチメートル)以下の小さい玉は中国製でも美しさに遜色がないことから、中国からの輸入は4号以下の小さい玉が多い。このため、「数でいったら圧倒的に中国製が多いと思う」(池田専務)。

中国は世界最大の花火生産国。全世界の消費量の7~8割は中国で造られているのでは、と話す人もいる。「中国でも手作業がメインなのは一緒だが、1つの企業に500人も1000人も従業員がいて、工場の周りを回ると車で15分くらいかかったりする。おもちゃ花火の場合は、個数ベースだと90%以上は中国からの輸入ではないか」と冴木氏は言う。

技術も進んでいるといい、「たとえば中国は打ち上げにガスを使い、花火を同じ高さでそろえることができる」(冴木氏)。「中国に行くと、文字型の花火があったり、打ち上げ方でも角度など『おっ』と思う目新しいものを結構目にする」(池田専務)。

ただ、最近は中国でも人手不足などで人件費が上がり、花火の価格も高くなってきている。また、「事故のリスクなどを重視し、中国政府の方針で工場が減ってきている。4~5年前は5000~6000社あったが、今は2600社ほどになった。生産量が減ってきて、玉が入ってこないという状況も実際に発生している」と花火卸企業、鈴木花火(愛知県岡崎市)の鈴木章義常務は話す。

大曲の花火大会では日本でも有数の大会(秋田県大仙市提供)

そのため、この小さい玉を国内製造しようという動きも出てきた。秋田県大仙市では地元企業などの出資で「花火創造企業」という製造会社が設立され、2017年から本格稼働を始めた。

もともとこの地区は100年以上の歴史がある大会「大曲の花火」が開催され、打ち上げ花火の製造業者も5社あったことから、花火を観光資源として積極的に活用している。

2014年には「大仙市花火産業構想」という5年間の計画が策定され、観光客の増加や雇用の創出(花火創造企業では7月現在18人を雇用)を打ち出した。大仙市では毎月花火大開が開催されるなどし、観光客年間計277万人(2014年度から2018年度にかけて26万人増)という目標はすでに達成のメドがついたという。

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