九州大学「起業部」が学生社長を生み出すワケ 始動1年!九大公認「起業家輩出」の実態に迫る
「何もわからない学生がアイデアと技術だけで起業するのは勇気がいる。入部していなかったら、今ごろ僕は東京で修業中でしたね……。でも、起業部のおかげで最短で起業できたし、資金調達から会社の仕組みまでアドバイスしてもらえて非常に心強い」と飯塚さん。
学生4人で始めたチームは今や30人に増え、年内には50人体制にするつもりだ。現在すでにアメリカで法人を立ち上げ、世界展開も視野に入れて、数年で上場を目指す。
「情熱を持って集まってくれた仲間と1つの目標に向かっていくことがすごく楽しくて、毎日が充実しています。医療のボーダーレス化を牽引できるようなシステムを開発して、医療界をITでより良くしたい」(飯塚さん)
創部から1年が経ち、旗印となる第一号が誕生して、熊野さんは確かな手応えを感じている。昨年の活動からヒントを得て、今年度はテーマ選びにひと工夫した。昨年、ある部員がシール型ワクチンをビジネスにしたいと考え、九大で研究している先生に「先生の技術でぜひ起業したい」と熱い思いをぶつけたところ、協力を快諾してくれたのだ。
「大学の研究者の大半は起業しようと思っていないけれど、教育者なので学生が行くと応援してくれる」。そこで今年度はまず、部員が自分の学部の面白い研究を調べ、どんなビジネスになるか考えてピッチすることに。すると面白い研究が100近くも出てきた。これから夏の合宿でテーマを絞り、チームを組んでプランを練っていくつもりだ。
今後10年で50社の学生ベンチャー創出を目指す
「もちろんやりたいテーマがある人はそれに取り組んでもらいたい。だけど、もしなければ、九大には2000人を超える優秀な研究者がいて、最先端のユニークな技術や研究があるのだから、この環境を最大限に生かしてほしい。
今の日本にはビジネスにつながる技術や資金はあるのに、肝心の起業家がいない。九大起業部の部員たちが起業家になって大学の研究を世に出していけば、新しいステージが拓ける」と熊野さんは意気込む。
九大の大学発ベンチャー設立数は、国内の大学で第5位(2016年時点)。
起業部では今後10年で50社の学生ベンチャーを創出し、5社上場という目標を掲げている。
熊野さんが顧問として心がけているのは”教えすぎないこと”。
「僕の言うことが必ずしも正解じゃないし、優秀な部員たちの可能性をつぶさずに引き上げたい」
かつて自らが一歩踏み出せなかったからこそ、学生の不安な気持ちもよくわかる。熊野さんは学生たちを見守り、背中を押し、サポートすることに使命感を燃やしている。
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