まだ事実婚状態。会社を立ち上げたばかりで仕事も日々忙しく、毎回病院にも付き添ってあげられない。また、まだ親族ではないので手術の同意書にサインもできない。
「なので、実家に帰したんです。がんといっても、今は早期発見ならば治る時代。田舎なら空気もいいし、親元で完治させてこいと。治ったら迎えに行くから、そのときは正式に結婚をしようって」
そこから毎日メールのやりとりをしていたのだが、年が明けて春になった頃、『あんまり体調がよくない』という。
5月のある日、建設現場にいたら携帯が鳴った。出たら恭子の従兄弟からだった。
「前に何度か会ったことがあったんで、『お、どした? 元気か?』と言ったら、『実は、恭子が今朝亡くなりました』と。最初は、何を言ってるのかわからなくて、現実が受け入れられなかった。絶対治って帰ってくると思っていたから。電話を切った後に、その日組んでいた足場の一番高いところに登って、ワンワン大泣きしました」
誰にも泣き顔を見られたくなかった。泣いても、泣いても涙は止まらなかった。
8月に入籍する理由は
そんな経験を経てきたからこそ、縁あって出会った幸恵や美和と温かな家庭を築くことを、河野は心から望んでいる。
ゴールデンウイークには、幸恵の両親にあいさつもすませた。8月には両家が顔合わせをし、入籍をし、親子3人の暮らしが始まる。8月にしたのは、2学期のタイミングで美和が転校できるようにするためだ。
そして、河野はこう締めくくった。
「自分が惚れるよりは、惚れられたほうが幸せ。求めるよりは、求められたほうが幸せ。ただね、相手が思ってくれている以上のものをオレは返したいですよ。それは、一生をかけてね」
不器用に生きてきた男がつかんだ幸せ。おめでとう。幸せにね!
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