「とにかくアタックが強かったんです。元夫とは大恋愛という感じじゃなくて、一緒にいると楽な人という感じでした。社会人になってから彼氏がいなかったので、このチャンスを逃したらいけないと思って付き合うことになり、向こうに押される形で、トントン拍子で結婚することになったんです。今思うと、あまりに急ぎすぎてどうかしていたと思うんですけど」
初対面で、嫁の心得を説く義父に唖然
付き合って、3カ月で結婚、そして、間を置かずに妊娠が発覚した。バタバタと結婚が決まったこともあり、和也の両親には、奇しくも結婚のあいさつが初対面となった。
和也の父は、元商社マン。初対面の麻美さんは、いすにふんぞりかえっている亭主関白な義父と、その後ろに隠れるようにして、おどおどした態度の義母の態度がやけに気になった。
結婚のあいさつが済むと、和也はのんきにも「このまま今日は、実家に泊まろうよ」と言い出した。ただでさえ、初対面の義理の両親との会話で緊張しているのに、麻美さんは、泊まるなんてもってのほかだと思った。
「いやだよ。気を遣うし、今日は帰りたい」。小声で押し問答が始まった。すると、それを聞いていた義父は突然「麻美、ちょっとこっちに来なさい!」と凄まじい剣幕で別室に麻美さんを呼び出した。
「まず、いきなり人の名前を呼び捨てって、『何なのこの人?』と思いましたね。うちの両親は、女性に対してそんな扱いをすることはないので、とにかく唖然としました。それで、いきなり『川口家の嫁たるもの、夫のいうことは絶対で、夫に逆らうことは許されない』と言われたんです。
もう信じられなかったですね。夫の名前の呼び方も改めろと、怒鳴られました。当時は、かずやん、と呼んでいたんですが、『みっともないと思わないのか! 自分の亭主なんだぞ!』と怒鳴られて、『すみません、和也くんにしますね』と言ったら、もっと怒られて、『さんづけしろ!』と言われてたんです。私は初対面のお義父さんにいきなり呼び捨てされてるのに、なんなの?とびっくりしました」
和也にその顛末を麻美さんが訴えると、和也は父親に立ち向かうどころか、いきなり「腹がいてぇ……」と言い始めてトイレに雲隠れした。居心地が悪そうに逃げ惑う和也の姿に、麻美さんは大きなショックを受けた。
当時は、妊娠初期。精神的にもナーバスになっていたこともあり、まったく予期していなかった義父の説教に、麻美さんは驚きのあまり、涙があふれてきた。悔しくて、惨めで、誰もいない物置に駆け込んで、一人で泣いた。
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