道徳教育が必要なのは「ゲスの極み」な大人だ 小中学校での「教科化」が目指すべき真の目的

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しかも、その「サムライ」の道徳を見事に体現してみせたのは、「道徳意識が低下している」などと言われて久しい「若者」だったのです。そして、むしろ、「最近の若者には道徳教育が必要だ」などと言っている「大人」の「教育者」のほうが、カネと利益のためなら恥も名誉も知ったことかという「ゲス」さ加減を、これまた見事なまでに、体現してみせたのです。

道徳を知らない「大人」たち

さて、かねて報道され、賛否が飛び交っているとおり、2018年4月から、小学校の「道徳」が「特別の教科」に格上げされました(中学校は2019年4月から)。子どもや若者たちの道徳意識が低下しているのは、学校がきちんと道徳教育をしていないからだ。だから、たんなる教科外活動としての「道徳の時間」ではなく、「道徳科」という「教科」として、教科書を使ってきちんと授業をして、子どもたちの道徳性を「評価」せよ、というわけです。

しかし、いったい、ほんとうに「道徳教育」を必要としているのは、誰なのでしょうか。

今回のワールドカップの日本代表は、ベテラン選手が中心で、一部では「おっさんジャパン」などとも揶揄されましたが、スポーツ選手としてはともかく、社会的には、30代はまだじゅうぶん「若い世代」です。ましてや、日大の加害選手にいたっては、まだ学生でした。

10代の学生や、20代、30代の若いスポーツ選手たちが、見事に「サムライ」らしい道徳を発揮したのです。そして、それに対して、日本の圧倒的多数の庶民たちが、共感と称賛を寄せました。

他方、何万人という前途ある若者たちを預かり、彼らを「教育」すべき立場にある「大人」のほうは、「サムライ」らしい道徳のカケラもなく、むしろその若者たちを、おのれの利益のための「手段(道具)」にさえしていたのです。

しかも、その日大アメフト部監督の姿は、ある人物を、まざまざと連想させるものでさえありました。

言うまでもなく、わが日本国民を「代表」する内閣総理大臣、安倍晋三氏その人です。

当時、「内田正人と安倍晋三は瓜二つじゃないか!」というコメントが、ネット上にあふれかえりました。まさにそのとおりです。

潔さも正直さも誠実さもなく、厚顔無恥で、保身のためには、あからさまな嘘をひたすら並べ立てて、はばからないところ。本来、政治や教育の「目的」であるはずの国民や学生を、私的な利益のための「手段(道具)」に貶めて、平然としているところ。これらの点において、まさに両者はまったく瓜二つです。

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