アメリカ産「豚くず肉」が直面する深い悩み 貿易戦争によって中国販路が失われる可能性

拡大
縮小

米国食肉輸出連合会によれば、米国が中国に輸出する豚くず肉の平均価格は、2017年には1ポンド当たり約76セントだった。

人間が食べる食品として他国に販売しないのであれば、豚くず肉は同約18セントの価格で国内販売することになる。連合会によれば、中国への輸出量を考えると、豚1頭あたり1.55ドルの損失に相当する。

こうした豚くず肉の価格低下によって、来年にかけて米豚肉産業は全体で約8億6000万ドル(約970億円)の損失を被る羽目に陥る、と連合会は試算している。

「苦しむのは養豚農家だ」

前出のヘイズ氏は、豚1頭あたりの仕入れ価格を抑えることによって、農家にこの損失を転嫁しようとするだろうと予想する。

「苦しむのは養豚農家だ」とヘイズ氏。

需要低下に伴い、加工企業がより多くの豚くず肉を動物用飼料の原料として提供することになると、連合会は予想。ただ、市場シェア拡大に努める加工企業が増えるにつれて、このセグメントにおける価格も下降圧力に晒される可能性がある。

オハイオに本社を置くJHルース・パッキング・カンパニーの営業担当マネジャー、トニー・スターンズ氏によれば、同社は生産する豚くず肉のほとんどを動物用飼料として1ポンドあたり20セント以下で販売しているという。

「この部位を売る可能性があるのは、現状でも売れる物はすべて売っている企業だ」とブルックス代表は語る。

米国での供給増加に対応して、ペットフードメーカーは、原料として使用する豚くず肉を増やす可能性がある、と業界団体ペットフード・インスティチュートのダナ・ブルックス代表は語る。そうした企業には、「ピュリナ」ブランドを持つネスレや「ペディグリー」「ウィスカス」ブランドを擁するマースなどが含まれる。

「米国で人間が食べない豚肉の部位は、ペットにとっては高い栄養価を持っている場合が多い」とブルックス代表は語る。

(Tom Polansek 翻訳:エァクレーレン)

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT