イラン怒る!「ホルムズ海峡封鎖」匂わす思惑 犬猿の仲、アメリカとイランが舌戦開始

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さかのぼれば、1980〜1988年のイラン・イラク戦争では、ホルムズ海峡から入ったペルシャ湾で、両国軍が石油輸出を妨害するために関係する船舶を攻撃し合った。2015年にはイランの精鋭部隊、革命防衛隊がホルムズ海峡で機雷施設を訓練する様子が放映されたほか、2016年にはペルシャ湾で、イラン革命防衛隊の小型艦船が米艦艇に異常接近して威嚇射撃を受けるケースが相次いだ。

このように石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡やその周辺の動向は、日本を含め、石油に依存する経済活動への影響が大きい。その海峡の封鎖を示唆することは、イランが米国の核合意離脱などで窮地に陥っていることを示すものでもある。

ロウハニ大統領が封鎖ちらつかせる意味

米国による核合意離脱に前後して、イランの通貨リアルは下落し、最近も暴落と言える状況が続いている。6月25日には、首都テヘランのバザール(市場)でストライキが行われたほか、街頭でも抗議デモがあった。物価の上昇などで生活を圧迫されたイラン市民の不満は極度に高まっている。

今回注目すべきは、ホルムズ海峡の封鎖を最初にちらつかせたのが、穏健派のロウハニ大統領だったことだ。

これまでは、革命防衛隊など反米路線を推し進める保守強硬派側から提起されることが通例だったが、ロウハニ大統領は7月4日、「イランの原油輸出だけを封じ込めることができると考えるのは間違った思い込みだ。米国はイランの原油収入を途絶させることはできない」と述べ、海峡封鎖を示唆したと受け止められた。その後、最高指導者ハメネイ師や革命防衛隊などが海峡封鎖に同意する発言を繰り返し、緊張が高まった。

イランでは、国際協調路線を進める穏健派と、反米・反イスラエルの保守強硬派がせめぎ合い、保守派寄りと目されるハメネイ師が調整役になって政治が展開されている。イランが2015年に核合意に同意したことは、ハメネイ師がロウハニ大統領の国際協調路線にお墨付きを与えたことを意味した。

一方、次期最高指導者の有力候補の1人であるロウハニ大統領の融和路線が頓挫するのを願う革命防衛隊などの保守強硬派にとっては、トランプ政権による核合意からの離脱は好都合。これに対して、ロウハニ大統領は、あくまで核合意を部分的にでも存続させることを狙い、ホルムズ海峡封鎖という最悪のシナリオを示すことで、国際社会から譲歩を引き出そうとしているものとみられている。

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