イラン怒る!「ホルムズ海峡封鎖」匂わす思惑 犬猿の仲、アメリカとイランが舌戦開始

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イラン側が、政治的な駆け引きから海峡封鎖ちらつかせているものの、実際に封鎖できる可能性は極めて低く、可能になっても一時的との見方が一般だ。

というのも、ペルシャ湾を挟んだカタールには、地域最大の1万人を超す米軍兵士が駐留する米軍基地があるほか、バーレーンには、米海軍第5艦隊の司令部が置かれている。イランが封鎖に乗り出せば、圧倒的な軍事力を持つ米軍がイランの軍事基地などを直接攻撃するだろう。

イランがゲリラ戦に挑む可能性も?

ただ、封鎖は、軍事力が圧倒的に異なる「非対称戦争」の中で行われる可能性がある。目下、中東ではイランがレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラなどの非正規軍を軍事的に支援。米国が供与した兵器を持ち、軍事的に圧倒するイスラエルやサウジアラビアといった親米国に、間接的なゲリラ型の戦争を挑んでいる。ヒズボラにミサイルやロケット弾を供与しているほか、イエメンのシーア派系フーシ派にはミサイル技術を移転し、サウジの大きな脅威になっている。

海軍力で米軍に圧倒的に劣るイランの革命防衛隊は、ホルムズ海峡の封鎖を試みる場合、機雷を敷設することが予想されている。また、ミサイルやロケット弾で武装した小型の高速艇が米艦艇や大型タンカーを攻撃したり、自爆型の無人航空機を突撃させたりするというシナリオが取り沙汰されてきた。

米シンクタンク、ワシントン近東政策研究所は7月20日にウェブサイトに掲載した論考で、「イランがホルムズ海峡を完全に制圧することは極めて考えにくい」「短時間にわたって海峡の封鎖に成功したとしても、米海軍の直接的な攻撃を前に(封鎖が)続くことはないだろう」としている。

だが、前述したように、イランはゲリラ型の戦闘を欧米の海軍やホルムズ海峡を航行するタンカーに挑み、石油輸送に甚大な影響が出る可能性も排除できない。有事におけるホルムズ海峡の脆弱性は以前から指摘されてきた。

このため、アラブ首長国連邦(UAE)では、アブダビ南西のハブシャン油田からオマーン湾に面するフジャイラ港を結ぶパイプラインを稼働させており、ホルムズ海峡を通らない石油輸出も一部ながら可能だ。ただ、イランがホルムズ海峡封鎖に乗り出せば、原油相場は急上昇し、日本を含めた世界の経済活動に大きな影響を与えることは確実な情勢だ。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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