イラン怒る!「ホルムズ海峡封鎖」匂わす思惑 犬猿の仲、アメリカとイランが舌戦開始
イラン核合意から離脱した米国が、欧州や日本政府にイラン産原油の全面禁輸を求めているのに対し、窮地に立つイランが石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖する可能性を示唆し、米国とイランの間で緊張が高まっている。
イランがホルムズ海峡の封鎖を示唆したのは今回が初めてではない。過去にも交渉を有利に進めるため、海峡封鎖をちらつかせて国際社会を揺さぶってきた。イラン産の石油輸入停止を米国が各国に迫っているのに対し、合意の存続を目指す欧州や日本政府などは制裁の適用除外を米政府に求めている。イランには、海峡封鎖の可能性を示すことで、石油輸入に依存する欧州や日本を通じて米国への圧力を強め、何らかの譲歩を引き出したい思惑もありそうだ。
これに対して、トランプ米大統領は「二度と米国を脅すな。さもなくば、歴史上類を見ないような重大な結果を招く」と激しく反発。核問題で北朝鮮を交渉の場に引きずり出すことに成功したトランプ大統領としては、イランに対しても最大限に圧力を強め、有利な交渉を進めることをもくろんでいるはずだ。現時点では、米・イランの舌戦が激化しているだけであり、ホルムズ海峡封鎖の可能性についても冷静に受け止めるべきだろう。
イランを追い込む米国の思惑
オバマ前政権時代の合意をことごとく反故にしているトランプ大統領は5月、2015年に米英仏独ロ中の6カ国 とイランの間で結ばれた核合意から離脱した。核合意がイランの弾道ミサイル開発の制限を対象にしておらず、中東の過激派やゲリラに対する支援活動も野放しになっているとして欠陥だらけだとの立場だ。一方、欧州など核合意を擁護する諸国は、イランによる核兵器開発を少なくとも一定期間は封じることができる合意だとして存続を求めている。
米政府は、核合意を頓挫させることでイランを追い込んで交渉の場に引きずり出し、有利な条件で新たな合意を結びたい考えだ。このため、各国にイラン産の石油輸入停止などを求め、イラン企業が関与する石油や、石油化学製品の購入については、11月4日に制裁発動の猶予期間の期限切れを迎える。
欧州や日本企業の多くは、欧州連合(EU)や自国政府と米政府の交渉の行方次第では、イラン産の石油輸入継続の可能性も残されているとして様子見だが、米国の制裁を警戒して早くもイラン事業からの撤退を決めた企業も一部ある。
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾の間にあり、最も狭い部分は幅33キロで大型タンカーが通れるのは約7キロにすぎず、水深も比較的浅い。海上輸送される世界の原油の約40%が通過し、日本が輸入する原油の85%もこの海峡経由だ。2011年にはイランのアハマディネジャド前政権が欧米の経済制裁に反発し、海峡封鎖を警告したこともある。
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