池上彰が説く「天皇と皇室について知る意味」 日本という国のあり方を考えることにもなる

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平成の時代が終わりに近づきつつある今、改めて天皇と皇室について考えてみます(写真:brize99/iStock)

2016年7月13日、NHKの「ニュース7」は、番組冒頭で、天皇陛下が天皇の位を生前に皇太子に譲りたいという意向を宮内庁関係者に示されている、というスクープを報じました。

このスクープの後を追うかたちで、翌日の新聞各紙も「生前退位」を大きな見出しとともに報じています。皇后陛下は、この「生前退位」という見出しを見て、大きな衝撃を感じられたそうです。

2016年10月20日、宮内記者会での質問に対して「新聞の一面に『生前退位』という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした。それまで私は、歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかったので、一瞬驚きと共に痛みを覚えたのかもしれません。私の感じ過ぎであったかもしれません」と回答を寄せています。

そのため、それ以降は、マスコミ各社は「生前退位」という表現を使わないようになり、「譲位」という言葉を使うようになりました。

2016年8月8日、宮内庁は「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」と題したビデオメッセージを発表しました。私たちの多くは、その内容を見たり読んだりして、天皇陛下のお務めの負担の大きさにあらためて気付かされました。

確かにこれまでも、天皇陛下と皇后陛下が被災地を慰問される姿は何度となく報道されました。ご高齢の身であることを考えれば、大きなご負担がかかっていることはなんとなくわかっていた。でも、そういった務めが果たせなくなりそうだから、もう譲位をしたほうがいいというお気持ちを表明されたことで、私たちもあらためて「天皇のお務め」を考えるきっかけをもらったのです。

天皇は「日本国民統合の象徴」って?

多くの人が学校の授業で日本国憲法について教わったはずです。憲法には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」である、と記されています。でも、「日本国民統合の象徴」とはどういうことなのか? 私は子どもの頃、よくわかりませんでした。「象徴」とは具体的にどういうことなんだろうか。憲法の字面だけを眺めていても、よくわかりません。

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