避難所生活を快適にする「段ボール」の舞台裏 間仕切りだけでなく授乳室や紙相撲も

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また、幼児用補助便座を置けるボックスを作れないか、という意見もあり、トイレ収納用品「スッキリ・トイ・トレ収納」も開発しました。この製品は、小物置きやトイレットペーパー入れとしても使え、また意外なことに、マンガ本が大量収納できる、ということで若者の間でも評判を呼びました(3100円 税別)。

松田社長と女性更衣室・授乳室(筆者撮影)

最近では、東日本大震災を機に開発した「女性更衣室・授乳室」を、全国の行政組織に備えてもらおうと活動しています(実勢価格10000円程度)。折り畳めばわずかのスペースに収納できるので、すでに八尾市とも防災協定を結び、入札で3つの自治体の採用も決まっています。

また、避難所の床で就寝すると大量のホコリ、雑菌を吸い込む問題があります。その対応として、コンパクト設計で備蓄も可能な強化段ボール製簡易ベッドを開発しました(実勢価格7500円程度)。今も避難所からの注文が多い商品です。

4年ほど前になりますが、NHK「新・ルソンの壺」(2014年3月9日放送)で紹介してもらった反響も大きかったと言います。この番組は世界にも配信されており、台湾の会社から引き合いが来たり、ニューヨークからメールが入ってニューヨークで行う展示会にぜひ出展すべきだ、とのお誘いも受けたそうです。

「継続は力」と信じる

松田社長は今も東北の支援を続けていますが、やはり「継続は力」だと感じているそうです。

2014年2月には経済産業省の「がんばる中小企業300社」に選ばれました。選定理由には「被災者への支援がきっかけとなった紙加工を活用し、提案力のあるものづくりにこだわって地域の活性化に貢献」とあります。

また、日本政策金融公庫総合研究所発行の『東日本大震災と中小企業』(2014年7月31日発売)では、わずか12社掲載中の1社に選ばれました。関西以西では当社だけであり、これも今まで地道に支援活動を続けていたお蔭と感謝しています。

松田社長は子どもの頃、母親に「世のため、人のためになることをすれば、いつか報われる」と言われたそうです。その言葉の意味が今になってようやく分かる、と言います。父親の阪神大震災での支援活動に触発され、母親の言葉がその社長の背中を押しました。今会社と社長があるのは、こうした立派な両親の存在があったからこそだと感じています。

マツダ紙工業は7月上旬の西日本豪雨の被災地への支援活動にも乗り出しています。松田社長は「避難所のお年寄りに簡易段ボールベッドが届けば、昼間はそこに座ってエコノミー症候群の予防にもなる」と言います。支援は緒に付いたばかりですが、同社の温かい想いが少しでも多くの避難所に届くことを祈っています。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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