ANA「1000便欠航」招いたエンジン問題の真因 夏の多客期に痛手、9月以降も欠航続く見込み

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ANAのB787におけるロールス・ロイス製エンジンのトラブルは、これが初めてではない。2016年8月には、トレント1000の「中圧タービンブレード」で設計よりも短期間で劣化し破断することがわかり、当初決めていた整備サイクルよりも早い段階で部品を交換する必要に迫られた。結果、一部便で欠航が発生した。大気中の汚染物質による金属の腐食を防ぐコーティングの範囲や量などに設計上のミスがあった。

ロールス・ロイス製エンジンの構造は複雑

エンジンの整備に詳しい航空経営研究所の稲垣秀夫・主席研究員は、エンジン部品の不具合は長期間飛行機を飛ばしていれば避けようがないと前置きしたうえで、「ロールス・ロイスはほかのエンジンメーカーに比べ、技術的なチャレンジをする会社」と評する。

「彼らの特徴は、エンジンのタービンや圧縮機が低圧、中圧、高圧の3軸構造であること。GEなどは低圧、高圧の2軸構造だ。3軸にすることで燃費は上がる。一方で構造は複雑になる」(稲垣氏)

ロールス・ロイスはエンジンの不具合問題を早期に解決できるか(写真:Rolls-Royce plc)

航空評論家の青木謙知氏は、「以前はエンジンメーカー自身も航空機を保有し、エンジンの疲労や摩耗などを調べるために航空会社より早く飛行時間を稼ぐような試験を行っていた。だが最近はあまり聞かれなくなった」と指摘する。

また今回ANAの欠航が大規模化したことについて青木氏は、「昔に比べて航空会社が持つ予備機が少なくなっていることも遠因ではないか。経営効率を考えると仕方ないが、保有機材数を最小限に抑えているため、ちょっとしたことが起こると足りなくなってしまう」と見る。

B787は高い燃費性能を誇り、中型機の大きさでも長距離を飛ぶことを可能にした。ANAやJALは大型機が埋まるほどの需要がなくとも、欧米の都市に路線を張れるようになるなど、路線戦略に革新をもたらした。ANAの787が本来の能力を発揮するためにも、ロールス・ロイスには迅速な対応が求められる。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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