ANA「1000便欠航」招いたエンジン問題の真因 夏の多客期に痛手、9月以降も欠航続く見込み
「ANA様およびご利用のお客様に大変ご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げます」。ロールス・ロイスの民間航空部門プレジデント、クリス・チョラートン氏は7月17日、ANAにおける一連の欠航や遅延について謝罪の声明を発表した。
エンジンの設計上の問題とは何か。トレント1000型エンジン内で空気を圧縮する「中圧圧縮機」の回転翼で起きたものだ。この圧縮機には計8段の回転翼があるが、入ってきた空気が微妙に乱れ、1段目と2段目の回転翼が激しく振動することがある。ロールス・ロイスが行った試験で、最悪の場合亀裂が入る可能性が確認されたという。実際ANAではこれが原因となり、2016年8月25日の羽田発福岡行き241便が離陸直後に引き返し、羽田空港に緊急着陸するトラブルが発生した。
ロールス・ロイス側は東洋経済の取材に対し、「ジェットエンジンは現存する最も高度なテクノロジーを利用する複雑な機械だ。エンジンの運用が始まってから数年経たないと表面化しない問題がまれに起こるが、今回もその1つ。点検指示は運航中の出来事を受けたものではなく、われわれの直近のエンジンのベンチテスト(社内試験)でわかった新たな情報に基づいている」と説明する。
欧州の航空当局はロールス・ロイスからの報告を受け、4月に点検指示を発出。国交省航空局も欧州に従い指示を出した。このときの対象は、主として機体が長い787-9型機に使われるトレント1000の「パッケージC」型だった。その後ロールス・ロイスが調査を進めると、主に機体が短い787-8型機で使われる「パッケージB」型でも同様の問題が見つかり、6月に追加の点検指示が出された。
400回超の点検のうち、1割で不具合見つかる
ANAはパッケージCのエンジンを66台、パッケージBのエンジンを70台使用している。国交省の指示では、パッケージCは一定回数飛行した後に回転翼の点検を繰り返し行い、パッケージBは1回のみ点検を行う規定だ。7月16日時点でBとC合わせて410回の点検を終え、回転翼の亀裂などの不具合はそのうち41回見つかった。不具合があれば、順次新品の回転翼に交換している。点検には1~2日、交換には20~30日かかるという。
ただ現在ロールス・ロイスが提供している新品の回転翼は、不具合が見つかったものと同じだ。7月17日のチョラートン氏の声明では、新たに設計した回転翼は現在検証試験の最終段階にあり、年内にはANAなどトレント1000を利用する航空会社に提供できる予定だとした。パッケージCの場合、それまでは繰り返し点検を継続する必要がある。
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