恋人や伴侶「デジタル監視」のおぞましい実態 子ども見守りツールやスマホ捜索機能を悪用
「この悪用について私たちは誤解し、軽視している」とDVの根絶を目指す非営利組織NNEDVのセーフティネットプロジェクトを率いるエリカ・オルセンは言う。「犠牲者に対し即時に物理的な接近がなければ、それほど危険ではないと考えがちだ」。
被害者が監視されていることに気づかなかったり、被害を通報しなかったりするため、デジタルストーキングについての統計も得にくい。監視されていると思っても、隠れたソフトウエアがその実証を困難にさせることもある。
DV被害者の17%はスマホで監視されていた
しかし、テクノロジー系サイトのMotherboardによると計10万人以上のデータが被害に遭ったとされる昨年の2社によるデータ漏洩事件からも、この問題の規模の大きさがうかがえる。
トラッキングアプリを提供するmSpyはニューヨーク・タイムズに、今年第1四半期に米国で2万7000以上を販売したと明かした。
米疾病対策センター(CDC)が昨年公表した統計によると、米国では女性の27%、男性の11%が身近なパートナーからストーキングや重大な影響のある性的もしくは身体的な暴力の被害を受けている。
米国でのデジタルストーキングを伴うDVについての包括的な統計はないが、オーストラリアで2016年に発表された小規模な調査では、DV被害者の17%は、スマートフォンアプリを含むGPSによって監視されていた。
フロリダでは2013年、ルイス・トレドという男が妻の浮気を疑い、「SMS Tracker」というアプリを妻のスマートフォンにインストールした。ボルーシャ郡保安官事務所のA・J・パグリアリ巡査部長は、「妻が送受信したメールと写真を見ることができたと彼は話していた」と振り返る。