あの「グラミン銀行」が日本を救う日は来るか

日本展開における期待と課題

数年前に施行された生活困窮者自立支援法は、法的な位置づけは要保護世帯を増やさないために、生活保護予備軍にとどめておくための制度ととらえられる。本来は、就労支援があるのだが、取り組む職員なり担当者はどこかで働くことはできないかという働きかけが精いっぱいで、強制力はない。受け入れる企業側の負担も大きい。

そもそも、いろいろな事情で働くことが困難だからこそ生活困窮しているのであり、就労ノウハウがない職員がどれだけ面談を繰り返しても、生活困窮状態からスムーズに脱却を促すような仕組みには思えない。

グループ全体が借金の責任を負う仕組み

一方、グラミンの取り組みは生活費を貸し付けて急場をしのぐような種類の融資ではなく、生活困窮者のための、スモールビジネス資金融資である。しかも、主な対象は女性やワーキングプアで、起業に必要な勉強や資格を取るための資金、材料仕入れなどの運転資金、設備を買うための設備資金など、仕事のための資金であればおカネを借りることができる反面、生活資金の取得はできないことになっている。

この辺りが、政府の生活福祉資金貸付制度や消費者金融の貸し付けとは違う点である。ビジネス向けの融資でありながら、少額であり、金利も法定金利の上限ぎりぎりではない(貸金業法の非営利特例対象法人に該当のため上限金利7.5%の見込み)。融資する側のグラミンは融資利息によって運転資金を賄うが、必要以上の儲けをよしとしない。利益を求める株主もおらず、あくまでも社会課題の解決のための金融を目指している。

では、実際にどのような仕組みでおカネを借りることができるのだろうか。

グラミンでは、5人で構成される互助のグループを活動単位とする。たとえば、貧困から脱却するためにスモールビジネスを立ち上げたい互助グループのAさんにおカネを20万円貸すとする。Aさんは借りた20万円で、塾通いの小学生、中学生のための弁当を作って販売するビジネスを立ち上げる。塾弁の購入者は自分でも探すが、互助グループの4人の協力を得られるだろう。こうして、Aさんは自力で日銭を稼げるようになる。

Aさんが借りたおカネをきちんと返済できない場合、互助グループの連帯責任となり、評価が下がってしまう。つまり、次に互助グループのほかの人がおカネを借りようとしても借りられない可能性が生じてしまうため、自然と互いを支援するシステムが出来上がり、ビジネスも成功しやすくなるというわけだ。ビジネスにおいて大きな課題となる集客を共同でサポートできることは、ビジネス初心者にとって大きな支えとなるだろう。

では、グラミンが日本で事業を開始するにあたって、どんなことが期待できるだろうか。まず1つは、貧困層の救済である。日本ではシングルマザーの貧困問題が取りざたされているが、低所得状態にあるシングルマザーをグラミンが支援することで、貧困状態から脱却するチャンスが与えられる。公的部門ではできなかった貧困からの救出を、民間部門であるグラミンであれば担える。

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