日本企業をとことんダメにした「PL脳」の呪縛 「ファイナンス思考」なくして復活はない
日本企業は世界に誇るべき技術力や優秀な人材を抱えているにもかかわらず、そうした潜在能力を十分に発揮できているとはいえません。「失われた10年」というフレーズはいつの間にか「失われた20年」にすり替えられ、今となっては「失われた30年」に至ろうとしています。
その背景には、社会の成熟化や人口減少に加えて、「PL脳」が日本のビジネスパーソンに深く根づいた結果、「国民総PL脳」とでも呼ぶべき状況に陥っていることが一因なのではないでしょうか。かつては製品クオリティや価格競争力で圧倒していたはずのアメリカ企業や、成長著しい中国企業の後塵を我々が拝するに至った背景には、「PL脳」に基づく内向きで縮小均衡型の企業体質が多分に影響しているように思えてなりません。
バブル以降の日本を取り巻く停滞状況と負のサイクルを抜け出すために、私たちは「PL脳」の呪縛から脱する必要があります。そのためには、会社に関わるすべてのビジネスパーソンがPL脳に代わる新たな発想法を身につけなくてはなりません。そのカギとなるのが、ファイナンス的な物の見方や考え方であると、私は思うのです。
ファイナンス的な「物事の考え方」のことを「ファイナンス思考」と呼ぶことができると思います。多くの日本企業がはまり込んでいる「PL脳」に代わる概念として、「ファイナンス思考」が一体どのようなものであり、どのように日々の業務に活かされるのかについて理解を深めていくことが重要といえるでしょう。
投資家にとっても重要な基礎教養
ファイナンス思考は、事業を通じて個々人が、社会により大きなインパクトを与えるために、また会社の成長に貢献するために、欠かすことのできない基本的な考え方です。会社のあらゆる活動に紐づいているという点で、ファイナンス思考が必要なのは、財務部門の担当者だけではありません。
会社の業務に取り組むあらゆる職種の方々が体得しておくべき思考法です。また、会社が発表する戦略や実際の活動が、会社の価値の向上にどのようにつながるのかを理解するうえで、ファイナンス思考は会社の実務に携わる方だけでなく、投資家の方にとっても重要な基礎教養であるといえるでしょう。
財務責任者であれば、実務上の専門的なファイナンスの「知識」が求められますが、一般のビジネスパーソンにとっては、細かな「知識」は必ずしも必要ありません。それよりも大事なのは、その根本を支える考え方です。「ファイナンス知識」がコンピュータのアプリケーションだとすれば、「ファイナンス思考」はそれを下支えする“OS”のような存在といえるのです。
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