全米も熱狂のゲーム大会「eスポーツ」の正体 日本人プロ選手が育つための3つの条件

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ほかにも世界的に多額賞金が設定されている大会は多々あるので、国内でも多くの企業から出資を募り、賞金額を増大すればいいという声もある。だが、賞金が高ければプロ選手の収入に好影響があるかというと話は単純なものではない。海外と日本では高額賞金大会を巡る法律問題の違いがある。

高額な賞金は、プレイヤーの重要な収入源となり、プレイヤーをメディアに露出する話題性も提供してくれる。しかし、日本でeスポーツ大会を開催するにあたっては、刑法、不当景品類及び不当表示防止法、風俗営業法に抵触しない枠組み作りが必要となる。この基準をクリアし、法令を順守した大会を運営するための主催者の労力は並大抵ではないこともまた事実なのだ。

【編集部追記(2018年7月14日22時40分)】過去の東洋経済オンラインの記事「eスポーツ高額賞金、阻んでいるのは誰か」「eスポーツ高額賞金、省庁はどう判断するのか」にあるように、消費者庁は「興行性のあるeスポーツ大会は、景品表示法に抵触しない」との見解を示しています。刑法、風俗営業法に関しても罰則規定があるわけではありません。これまでに当局から指導などが行われた記録もありません。

幸いにして、ここ数年、日本の法令に基づく賞金問題をクリアにした大会が増えつつあり、中規模・大規模な大会も定期的に実施されるようになってきた。人とおカネをめぐるエコシステムもできつつあり、流れがよくなってきている。先に述べたように、日本がゲームクリエイティブだけでなく、eスポーツにおいても世界のスタンダードに近づくためには、各種法令について見直しを迫ることができるほどの、さらなる関係者の努力が求められる。

日本という市場の利点

もっともeスポーツに対して、日本という市場に何ら利点がないわけではない。家庭用ゲームが主流の日本ではあるが、スマホ市場の強さは国際競争に負ける規模ではない。また世界的に見ても、今後のeスポーツを加速させるのはスマホゲームであるという見方が急速に広まっていることも追い風になっている。

たとえばPCゲーム版から始まったPUBGというFPS系(主人公視点のシューティングゲーム)eスポーツゲームタイトルが、このたび、スマホ版をリリース。ダウンロード数が好調であることから、スマホという端末の持つ可能性がうかがえる。また、クラッシュ・ロワイヤルやシャドウバースなども、国内で展開するプロリーグの設置を発表し、選手たちは月額報酬を受け取り、プレイやスキル発展に専念できる環境が整いつつある。

これからのeスポーツはスマホでの盛り上がりをどれだけ最大化させるかが、日本においても世界においても重要な指標となってくる。スマホ分野でのeスポーツタイトルの誕生・普及、そしてプロリーグ設置など、カリスマクラスのスター選手を誕生させていく流れがさらに強まることが、日本国内でもeスポーツが流行する条件になるだろう。

山内 隆裕 CyberZ代表取締役

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やまうち たかひろ / Takahiro Yamauchi

1983年、東京都生まれ。2006年にサイバーエージェント入社。2008年5月にモバイルサイト制作会社のCyberX取締役に就任。翌年、スマートフォン向け会社の株式会社CyberZの設立と同時に代表取締役に就任した。2012年7月には米現地法人のCyberZUSAを設立し、海外事業にも注力。同年10月に最年少でサイバーエージェント取締役に選ばれ、同社のスマートフォン関連事業を担う。2015年から動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」、国内最大級のeスポーツ大会「RAGE」を立ち上げ、AbemaTVが2018年1月21日より立ち上げたウルトラゲームスチャンネルでも統括プロデューサーを務める。

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