片山晋呉の不祥事から読み解くゴルフの本質 なぜトッププロがやらかしてしまったのか

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ゴルフは他のスポーツと違って、審判はおらず、自分が判断するスポーツ。ゴルフ規則すべてを暗記しているわけではないが、いつも使いそうなところを見ても、ゴルフ規則の多くは起こってしまった「結果」に対してどうすればいいかを規定している。

ゴルフには「球はあるがままに打つ」という、18世紀半ばの最古のゴルフ規則にも記載されている大前提がある。ボールがなくなったり、池に入ったり、かつては洗濯物に飛び込んだりなど、「あるがまま」で打てない時にどう処置するかを積み重ねてきているのだと、筆者は思っている。

報道を見る限り、ミケルソンはこのゴルフの大前提を無視してでもスコアを優先するとしか見えない。ペナルティーをもらった方がいいスコアになるから故意にルール違反をしよう。そうなったら、自分が審判のスポーツが成り立つだろうか。そういう気持ちでこれまでやってきたのかとも思えてしまう発言だった。

規則では故意で違反することを想定していない。適用された14―5も、ティーアップしたボールが風などで落ち始めたときに運悪くスイング中で打ってしまったり、2度打ちといって打ったボールが上がって空中にある間にクラブが追い着いてしまってもう1回当たったり、結果的に起きてしまったことに対して決められている。

後日、事の重大さに気づいたミケルソンは米国の一部メディアに謝罪の文書を送り「自分の行動を恥じ失望している。落ち着くまでには数日かかる」と声明を出した。

ゴルフは人格が出るスポーツ

片山は通算31勝を挙げている国内ツアーにずっと出られる永久シード選手であり、ミケルソンはメジャー5勝を含む通算43勝を挙げ、2012年には世界ゴルフ殿堂入りしている。

ゴルフを始めると、エチケット・マナーや難解なルールを周りから指導されるという経験をお持ちの方も多いだろう。ゴルフの敷居を高くしている部分でもある。2019年からより簡素化したゴルフ規則の大改正が行われ、日本も米国もゴルフをとっつきやすくし、人口を増やしていこうとしている最中に起こった「事件」だった。

プロゴルファーの中でもより一層、アマに対して「模範」にならなければならない2人の行為。それも後になって重大さに気づくというのは情けない。ゴルフは人生に例えられることもあり、その人の人格が出るスポーツともいわれる。

ゴルフ規則の第1章エチケットの「ゴルフの精神」の中にある言葉。2人はもう1度確認すべきだ。

「ゴルフゲームは、プレーヤーの一人一人が他のプレーヤーに対して心配りをし、ゴルフ規則を守ってプレーするという誠実さに頼っている」(日本語訳)。

(文中敬称略)

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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