「低能先生」を凶行に駆り立てたネット民の闇 匿名コミュニティによる正義追求の恐ろしさ

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タイトルにもあるように、「低能先生」は追い詰められる中で暴発したとみられる。そのことを解説する前に、まずは事件の経緯をおさらいしておきたい。

松本容疑者は株式会社はてなが運営するサービスを頻繁に利用していたと見られている。ひとつは「はてなブックマーク」で、ウェブのブックマーク、およびブックマークした記事へのコメントを利用者間で共有するサービスだ。

もうひとつは「はてな匿名ダイアリー」である。名称の通り、日記を匿名で投稿できるサービスだ。匿名とすることで、日常の生活とは切り離された自由な発想で日記形式の文章を投稿できるが、一方的な感情を吐露する場としても使われる。

松本容疑者は頻繁に迷惑行為を行っていた

なお、”匿名”は英語で”アノニマス”であるため、”アノニマスダイアリー”を略して「アノニマスダ」と呼ばれ、それが変換ミスなども相まって「アノニ増田」に変化。ネットコミュニティの中では「増田」と呼ばれている。いくつかの関連ブログに出てくる「増田」とは、はてな匿名ダイアリーそのものを示す場合と、その利用者や投稿されたエントリーを指している場合がある。

松本容疑者は、はてなブックマークの「IDコール」という、特定IDの利用者にコメント投稿の通知を送る機能を用い、頻繁に迷惑行為を行っていた通称「低能先生」と同一人物の可能性は極めて高い。

「低能先生」とは、自分が気に入らないコメントを残している人物にIDコールで罵詈雑言を送るのである。迷惑行為を繰り返すため、「低能先生」のアカウントは何度もアカウント削除されたが、それでも毎回、新しいIDを作成して同じ行為を繰り返していた。

罵詈雑言には「低能」という言葉が頻出するため、この迷惑行為を行うアカウント、人物は「低能先生」と呼ばれるようになっていった。それほどまでに長期間、多数の迷惑行為が続けられていたのだ。

はてな匿名ダイアリーには、「低能先生」の行いについてまとめたエントリーが多数掲載され、それぞれトラックバックでつながっている。そのうちのひとつを参照すると、「低能先生」がどのような罵詈雑言を書いていたのかを参照できる

また、こちらのエントリーを見る限り、ひとりの相手に1日最大6件ものIDコールを行っており、膨大なエネルギーをかけて多数の罵詈雑言を放っていたことが想像できる。低能先生のこうした行為は2016年ぐらいから始まり、何度もID凍結と新規ID作成を繰り返していたが、ID凍結の頻度が高まったのは岡本さんがブログの中で「低能先生」の行為を扱ったことがきっかけだったと言われている。

ブログの中では、批判的に「低能先生」の活動について取り上げられているだけでなく、簡単な通報で迷惑行為を行うIDを凍結できると紹介しており、ユーザーの間で「低能先生」を通報する機運が高まったことは確かなようだ。

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