あなたの「好きな色」が決まった本当の理由 好きと嫌いは行動科学最大の謎である
青い空、綺麗な水、といった良い印象を与える何かとひも付いた色を好むようになり、嘔吐物などを彷彿とさせる茶色がかった黄系統の色は人気がないとする。暗褐色の服しか持っていないこっちからすると腑に落ちないところもあるが、人によって目にする色の印象、頻度が異なることも関連しているのだろう。
たとえばカリフォルニア大学生とスタンフォード大学の学生に色について質問したところ、学生たちはどちらも自校のスクールカラーを好んでいるのがわかったなど、フィードバックループ(ある色を見る機会が多く、それが好ましいものであるほどその色が好きになっていく)がはじまることで、色の好みが形作られていくという仮説がある。
星評価よりも実際の行動に注目する
常日頃からレビューを書いていることもあって興味深かったのは、星評価、レビューと実際の好みの関係性を追った第1章「誤りは私たちの星評価にあるのではなく、私たち自身にある」。
ここでは最初に、ネットフリックスにおける、次に観るべき作品のレコメンドアルゴリズムをどのような発想で構築しているのかが語られていくが、その鍵は”好きだと視聴者が言ったものではなく、視聴者が実際に見たものへ”というアルゴリズム基盤の転換にある。もともとネットフリックスでは視聴者がどういった作品を高評価したかといった観点からレコメンドしていたが、実は星評価は単純に人の好みを反映したものではないことが近年わかってきた。
“イエリンがいうには、人は「自分ってこうなんだと思いたいんです。こういう自分というのを思い描いて、自分で自分にうそをつくことさえありますよ──どういう種類の作品を好きだというか、ある作品に星をいくつつけるか、本当は何を見るか」。『ホテル・ルワンダ』に星5つ、『キャプテン・アメリカ』に星2つをつけておいても、「見るのは『キャプテン・アメリカ』だったりするんです」”
たとえ自分のその選択を自分以外の誰もみていなかったとしても、人は自己演出的に評価をするようだ。たしかに、深く意識したことはなかったけれども、自分を振り返ってみてもそんな傾向がないとは言い切れない。だからこそネットフリックスは星の評価ではなく実際の視聴行動を元にしてレコメンドを決定し、星2や3の作品がオススメされてくるようになったのだ(今はもうネットフリックスでは星5評価はされていない。サムズアップとサムズダウンのどちらかだ)。
本章では他にも、初めにされた肯定的なレビューは本物か虚偽かにかかわらず、その後のすべてのレビューに大きな影響を及ぼす(「アラルの研究では、肯定に誘導するレビューは評点全体を25パーセント押し上げ、その状態はずっとつづいた」こんなん読んだらアマゾンで自著を褒める人が多発しそうだが)など、レビューと評価の関係性についての興味深い指摘が続く。
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