OPEC増産でも原油価格が下がりにくい理由 サウジや米国の本音はどこにあるのか

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OPEC総会では原油の増産が決まった。だが今後も原油価格は下がりにくいと筆者は予想する(写真:Heinz-Peter Bader/REUTERS)

6月22日、OPEC(石油輸出国機構)の総会が開催された。今回の重要な結論を言えば、市場予想を下回る減産緩和で決着したことに尽きる。

2017年にOPEC加盟国とロシアなどの非加盟国が開始した協調減産から1年半が経過、世界の石油在庫は着実に改善してきた。一部では「需給が逼迫してきた」との指摘も聞かれるようになったほどだ。そのため、総会では、7月からの増産で合意した。

小幅にとどまった増産規模

今回の総会は事前に減産緩和が決定される可能性が示唆されていたことから、通常の総会よりも市場の関心を集めていた。実際、増産幅が小幅にとどまったことが好感され、世界の指標であるWTI原油価格は22日に大幅に上昇。一時は1バレル=69.38ドルまで上昇する場面が見られた。OPECが増産目標を具体的に明示しなかったことは市場をやや混乱させたものの、「増産規模は日量100万バレルを下回る見通し」と伝わったことが原油相場を押し上げたようだ。

世界的に石油需要が増加する中で、今回の総会の開催目的は「OPECの一部の国についての産油量減少の穴埋めを図る」というものだ。しかし、今回の決定では、産油量が減少している国々が増産割り当てを受けており「増産を達成するのに苦戦を強いられる可能性」も指摘される。おそらく実際の増産幅は市場に伝わっているとおり、日量100万バレルを下回るとみられる。これは、事前にロシアが「日量150万バレルの増産を目指す」と公言していたことと比べると、かなり少ない水準であるといえる。

今回の総会の裏側をのぞくと、上記のようにロシアが積極的な増産により、自国の収入増加を目指していた。そして、サウジアラビアもこれに乗る形で大幅増産の可能性を示唆し、他の加盟国を間接・直接説得しようとした。

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