伊豆箱根鉄道の2路線が「まるで違う」理由 大雄山線と駿豆線、車両も経営戦略も大違い
この緑町のカーブでは、カーブを通過する際の「キキー、キキー」というきしみ音を軽減する対策として、電車が通過する直前のおよそ15秒間、スプリンクラーで線路に散水される。珍しく感じるが、散水で摩擦を少なくすることでのカーブの騒音軽減は東急世田谷線や京急空港線、京阪京津線などでも行っている。
なお、いわゆる17m旧型国電などが活躍していた大雄山線に初の18m新造車である5000系が導入されたのは1984年3月18日だが、「18m車導入に備え、その3年前のまったく同じ日である1981年3月18日に、車両とホームの接触を防ぐため、塚原駅をカーブ手前の現在位置に移動」(髙杉氏)する対策も行ったという。
交通系ICカード
大雄山線および小田原・箱根エリアの伊豆箱根バスでは交通系ICカードが使えるのに対し、駿豆線および伊豆エリアのバスは未対応であることも、大きな違いだ。
駿豆線の交通系ICカード導入の1つの壁になっているのが、いわゆる「エリアまたぎ」の問題だ。ご存じの方が多いと思うが、2013年3月23日から全国10種類の交通系ICカード(10カード)の相互利用サービスが開始され、いずれか1つのカードを持っていれば、北海道から九州まで対応する全国の鉄道・バスを利用できるようになったが、原則として各社のエリアをまたいでの利用はできないままとなっている。
このため、たとえばSuicaで東京方面から東海道線に乗車し、函南以西のJR東海管轄の駅で下車する場合、自動改札機を利用できず、窓口での精算が必要になる。三島駅でJR線から駿豆線に乗り換える場合、JR線の改札で窓口処理をしたうえでいったん外に出て、駿豆線の券売機で切符を購入しなければならない。
駿豆線にPASMOシステムを導入することは可能だが、「駿豆線は、およそ6割が定期利用のお客様であり、現状、PASMOとTOICA(JR東海)の連絡定期券業務が行われていない」(芹澤氏)ことや、当オンラインの2018年3月24日付記事(交通系ICカード「導入費用」は半端じゃない)でレポートしたように、交通系ICカード導入には数億円規模の投資が必要となるが、中小私鉄にとっては経営を左右しかねない問題であり、「導入は検討しているが、慎重にならざるをえない」(芹澤氏)というのが現実だ。
このような状況で大きな問題となるのが、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック対策だ。伊豆市にある「自転車の国サイクルスポーツセンター」が自転車のトラック競技とマウンテンバイクの会場になることが決定しており、同施設へは駿豆線の修善寺駅が最寄り駅の1つになっている。
現実問題として、2020年までに駿豆線に交通系ICカードを導入するのが難しいということであれば、輸送ルートや列車増便、駅のキャパシティも含めた輸送量の確保に加え、短期間に押し寄せる大量のトランジットをどのようにさばくのかが課題となる。
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