伊豆箱根鉄道の2路線が「まるで違う」理由

大雄山線と駿豆線、車両も経営戦略も大違い

具体的な方法については、交通事業者、道路管理者、行政などを含めて検討中であるとしたうえで、「会場が修善寺駅から7.5kmほど離れているため、(送迎バスなどの)二次交通も必要となる。以前、富士スピードウェイでF1が開催された際は、お客様ごとに乗車する電車・バスを指定することなども行っていたので、こういった過去の事例も参考にしながら知恵を絞っている」(髙杉氏)状況だという。

自転車で地域を盛り上げる

最後に駿豆線、大雄山線の現状と、昨年から新たに開始した「サイクルトレイン」の取り組みを紹介したい。

自転車を電車にそのまま持ち込める「サイクルトレイン」(写真:伊豆箱根鉄道)

駿豆線の年間総輸送人員(乗車人員)は1991年度の1531.8万人をピークに、2017年度は983.4万人とピーク時の6割程度まで減少しているが、2010年代に入ってからは減少に歯止めがかかり、ほぼ横ばいで推移している。大雄山線もほぼ同様の傾向で、1992年度の946.7万人をピークに減少に転じるが、近年はほぼ横ばいが続き、2017年度の実績は778.3万人だった。

駿豆線、大雄山線ともに定期利用者が全体の6割近くを占める傾向は、ピーク時も今も変わらない。駿豆線沿線には東芝テックや横浜ゴム、大雄山線沿線には富士フイルムやアサヒビールなどの事業所があるが、どちらかといえば、沿線からJR在来線や新幹線などに乗り換えて都市部へ通勤する人の割合が多いという。

なお、ピーク時と比べて直近の通勤定期利用者数が8割程度とそれほど減っていないのに対し、通学定期は学校数や学生数の減少などの影響から駿豆線で6割弱、大雄山線で7割程度まで減少している。

一方、定期外利用の状況はどうだろうか。駿豆線の定期外利用は1991年度のピーク時に709.6万人であったのに対して2017年度実績は412.1万人、大雄山線が1992年度の405.2万人に対して2017年度は320.5万人となっており、駿豆線はピーク時の6割弱と減少率が大きい。

このうち、どれくらいの割合を観光客が占めるのかは不明だが、駿豆線の伊豆エリアは観光客数が2013年度の約4000万人から2016年度には約4500万人に増加(観光交流客数=宿泊者数+観光レクリエーション客数 静岡県調査)しており、また2015年に世界文化遺産に登録されたことで韮山反射炉を訪れた観光客数は2014年度の約10万7千人から2015年度は72万6千人と大幅に増加(伊豆の国市統計)したが、駿豆線の数字からはこの恩恵が見えない。

こうした中、伊豆市の自転車の国サイクルスポーツセンターが自転車競技の会場となる2020年の東京五輪は、駿豆線沿線に世の中の目が向く良い機会になると思われる。同社では自転車を中心とした街づくりの取り組みが盛んに行われている沿線地域と連携して、2017年4月から、自転車を電車にそのまま持ち込める「サイクルトレイン」という取り組みを開始した。

富士山をバックに走る駿豆線7000系。駿豆線は地元で「いずっぱこ」の愛称で親しまれている(写真:伊豆箱根鉄道)

「平日は沿線地域の利便性向上に貢献しており、週末になるとサイクリストの利用が増える。狩野川沿いのサイクリングロードを楽しむ初級者から、輪行バッグに入れてきた自転車を三島駅で組み立て、自転車とともに駿豆線とバスを乗り継いで天城峠に移動し、自転車で一気に下っていくような中級者など、さまざまな利用が見られる」(芹澤氏)という。まだまだ利用規模は小さいものの、オリ・パラ開催に向けて自転車を軸に沿線地域を盛り上げていきたい考えだ。

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