ミレニアル世代をつかむ欧米スポーツの戦略 スポンサーシップの真の価値はどこにある?

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リバプールFCのレジェンドOBを起用したイベント風景(写真:リバプールFC)

そこで同社は、リバプールFCとのパートナーシップにおいて、社名や商品名ではなくCSR活動の「オレンジエイド」というネーミングをメディアに対し積極的に露出した。

クラブの人気OBらの協力を得て、ファンドレイジングのディナーパーティやマンチェスター・ユナイテッド戦の特別観戦会など、多くのイベントも実施。

その結果、シンガポール国内のオレンジエイドの認知度は5%から倍以上の12%まで上昇した。これはまさに、試合のライブ映像、スポーツニュース、選手のメディア出演、グッズの肖像など、スポーツチームならではの露出力のなせる業である。この成果により、課題だった運営状況が改善されたことは言うまでもない。

スポーツチームや人気選手を活用することは有効

また、南アフリカ共和国の金融サービス会社ディスカバリー社は、リバプールFCとのスポンサーシップ契約期間中だった2016年、彼らが以前から行っていたインフルエンザの予防接種支援のコラボレーションをクラブに提案。イングランド代表にもなったリバプールFCのレジェンド、ジョン・バーンズ氏をイメージキャラクターに起用することで多くのファンを支援に巻き込み、キャンペーン期間中に2632本の予防接種寄付に成功した。

同社は女性のスポーツ参画が盛んでない南アフリカ国内の状況を改善するため、女性スポーツ推進活動にも力を入れているが、この活動においてもヨハネスブルグにリバプールFCの女子チームを誘致するなど、さまざまなCSR活動のプロモーションにおいてクラブとのパートナーシップを活用している。

メジャーリーグ球団のボストン・レッドソックスをスポンサードしていたENEOSが地元の子どもたちと地域貢献活動を行うことで知名度を向上させたことは「レッドソックスが日本企業にも人気なワケ」(2017年8月10日配信)の記事でも紹介したが、最近では欧米のスポンサーシップに社会貢献的要素が含まれることがトレンドになっているように見受けられる。スポンサー企業の「ブランド力向上」「商品・サービスのプロモーション」の次に「CSR活動のサポート」といった要素がアクティベーションプラン(活性化計画)の中に盛り込まれることが一般的になっているようだ。

日本の企業もさまざまなCSR活動を展開しているが、そもそもCSR自体、単体のプロモーション展開がしづらいために注目を得にくい。スポーツチームや人気選手を活用したキャンペーンは、有効な手段の1つではないだろうか。

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