「幹部候補」育成に失敗する企業の3つの特徴

中堅の「サプライズ退職」には理由がある

育成が上手い企業は、「誰に、いつ、どんな機会提供をするか」の議論にも十分な時間を割いている場合が多い。たとえば、筆者が支援する企業の中で、新しい幹部や事業が加速的に生まれている企業では次世代リーダー候補の強み・弱みを一人ひとり吟味しながら、適切な配置転換を行い、上長の関与なども変えることで最適なチャレンジの機会を提供している。「機械的な昇進のステップ」としてジョブローテーションさせることや、行くことが目的になっている海外研修とは、真逆の発想だ。

③効果が可視化できていない・対象者の入れ替えがない

3つ目の失敗パターンは、人選して機会提供したことに満足して、次世代リーダーが本当に成長しているのかを評価していない場合だ。もともと中長期的な育成戦略であるため、結果の測定がうやむやになりやすく、3年後や5年後に振り返ってみると、「あの取り組みはなんだったんだ?」となってしまう。

「成長」という抽象度が高いテーマではあるが、一定の指標を設定して成長の度合いを可視化していくことが必要だろう。「誰がどのくらい伸びているのか」を見極められるようになれば、成長が鈍化している人には、その原因を突き止め解消していくことができる。

筆者の経験を踏まえると、場合によっては、育成コースから降りてもらうこともきちんと検討すべきだ。むしろ、選抜メンバーが硬直化した状態は、変化の激しい時代をリードする人材を育てる趣旨とは異なる。一定期間ごとに下位数パーセントのメンバーを入れ替えるようなルールを設けるのも、健全な緊張感を持って成長に臨んでもらいやすい。このような打ち手を実行するためにも、成長を測るモノサシをつくり、評価していくことが重要なのだ。

今回ご紹介した3つの失敗パターンは、人選→機会提供→評価という、次世代リーダー育成で重要な3つのステップにそのまま置き換えられる。しかし、この3つ以前にゼロ番目のステップも存在する。それは「ゴール設定」。全社として「いつまでに、どういう人材を育てたいか」という目標が定まっていないとすべてが上手くいかない。まずは育成プロジェクト自体が何を目指したものなのかを定義することが重要だ。

実は、冒頭にご紹介した「優秀なミドル人材から転職していく」現象は、将来の幹部候補を発掘・育成していく指針が社内で曖昧なことが引き金になっている場合も多い。将来の道筋が見えないため、「今の会社でこれ以上の成長(及びそれに見合った報酬)は得られない」と感じてしまう。キャリアに対するスピード意識が圧倒的に高まりつつある現在。企業の看板のみで優秀な人材を繋ぎ止められる時代はもう終わりに向かいつつある。
だからこそ各企業は、優秀なミドル人材がより成長実感を得られるような機会提供について、もっと真剣に検討すべきなのではないだろうか。

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