世界を騒がす「見るだけで買える」技術の正体 グーグルやアリババなどが出資する謎の企業
同社は、2015年に学校の体育館に児童らを集めて、実物大模型によるデモ映像を公開して大きな話題をさらった。突然、体育館の床を突き破って巨大なクジラが飛び出し、数メートルの高さまでジャンプしてから再び床を突き破り、大きな水しぶきをあげながら姿を消したのだ。子どもたちをはじめ、観客らが度肝を抜かれたことは言うまでもない。
実はマジック・リープには、アリババ、グーグル、クアルコム、アンドリーセン・ホロウィッツ、ワーナー・ブラザースなど、そうそうたる企業が出資している。投資額が技術や市場の可能性を示す一種のバロメーターだとすれば、マジック・リープがこれまでに40億ドル近い資金を調達していながら、2016年下期現在、まだ製品らしきものを何ひとつリリースしていない点は注目に値する(2017年にAR/MR用のヘッドセットMagic Leap Oneを発表、2018年中に発売予定とされている)。とはいえ、インターネットに引けを取らないほどの技術的な大躍進につながる可能性を秘めていると、多くの人々は見ている。
同社は最終的にどのような製品を目指しているのかをいっさい語らない秘密主義を貫いているが、世界各地の技術系コラムニストらは、同社の発表や特許出願、役員の採用状況などの断片情報を基に、同社内部で何が進められているのか探ろうと躍起になっている。
技術系メディアのあるライターは「コンピュータ生成のグラフィックスと現実世界を違和感なく融合可能なグーグル・グラスの増強版のようなもの。ヘッドセットには光ファイバーのプロジェクター、特殊なレンズ、大量のカメラが組み込まれている。現実と見紛うような拡張現実」と説明している。
商品を見つめるだけで買い物終了
マジック・リープがオンラインの体験をどこまで変容させるのかを把握するには、最近の同社の特許出願書類の重要ポイントに着目するほかない。
▼バーチャル・コントローラーがあるため、ハードウェアのコントローラーは不要
▼マッピング技術で仮想の物体を現実世界の空間に配置可能
▼自分がいる室内に友人、家族などが現れ、インタラクティブな講義やワークショップ、その他の交流の機会を一緒に持てる。お互いに相手の姿を視認可能
▼商品の周辺にレビューや評価、コメントを表示可能
▼ショッピングカートのハンドルを独自のコンピュータ・インターフェースとして利用
▼店内にあるか自宅にあるかを問わず製品を独自のインタラクティブ広告として活用
▼企業は自社製品の仮想デモを実施可能
マジック・リープでは、ネットワークに接続し、振動のフィードバックを返すことで仮想物体に触れる感覚を生み出す「触覚グローブ」なるものも特許出願している。
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