ところが、そのデートを終えた後に、久保田から1泊2日の旅行に誘われた。相談所の規約から言えば、旅行でもしも男女の関係になったら、それは成婚とみなされる。「どうしたらいいでしょうか?」と由美香に相談されたので、彼女には、こうアドバイスした。
「旅行に行くなら、その前に真剣交際に入る意思があるかを確認しましょう。お相手の男性にその意思があって、このまま結婚に向かえるなら、旅行に行ってもいいんじゃない?」
相手相談室に連絡をし、仲人から久保田にその旨を告げてもらうと、その夜由美香にメールが来た。
「飼っている老犬ががんでとても調子が悪くなったから、旅行は延期したい」
そのメールを境に連絡が来なくなった。由美香もあえてメールを入れずに放っておくと、1カ月後に“交際終了”が来た。由美香はこの状況を冷静に分析してこう言った。
「久保田さんは、結婚相手が欲しいのではなく、楽しくお付き合いできる恋人が欲しかったのでしょうね。私は、結婚相手を探すためにここにいる。彼の意思確認ができてよかった」
久保田から断られたことがさしてショックではなかったのは、旅行を延期された直後に泰雄から申し込まれ、見合いをして、その後に交際に入っていたからだ。
「久保田さんは一度、デートの帰りに私を家に車で送ってくれたことがあったけれど、『遠いな』を連発していたんです。でも、泰雄さんは、3時間の道のりを『遠い』と言ったことが一度もなかった。そこにも優しさと律儀さを感じました」
こうして泰雄とは、3カ月の交際を経て、結婚を決めた。
母に報告すると…
結婚することを母に報告すると、こんなことを言われたという。
「今はいい人かもしれないけど、結婚したら男は変わるよ。籍を入れたらこっちのもんだ、ってね。ま、それは結婚してみないとわからないけどね」
そんな母に、由美香は言った。
「結婚してみないとわからないなら、結婚するしかないじゃない(笑)」
この一連の話をしてくれた後に、由美香は私に言った。
「母は、25歳の若さで一回り年上の2人の小学生の男の子のいる父のところに嫁いだ。職人気質の父は頑固者だったし、いきなり2人の母親になって大変だったんだと思う。置かれた状況のなかで必死で生きてきたんでしょうね。子どもの頃、愚痴ばかり言っていて笑わない母親が幸せそうには見えなかった。私が泰雄さんを選んだのは、“この人といたら、いつも笑っていられるな”と思ったからなんです」
さらに、彼からもらった、宝物の言葉がある。
“ありのままの自分を好きになればいい”
いい人を選んだね。おめでとう! 幸せにね!!
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら