新知事でも「柏崎刈羽再稼働」が難しい理由 選挙戦では「原発争点外し」が奏功したが…

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柏崎刈羽原発の防潮堤。液状化による損傷リスクが指摘されている(撮影:梅谷秀司)

このように、現在の避難の仕組みは住民から信頼を得られていない。3月29日に開催された避難方法に関する検証委員会。交通問題に詳しい上岡直見委員(環境経済研究所代表)は、「柏崎刈羽原発で緊急事態が起きた場合に住民が安全に避難できるという確証にはまだ結びついていない」と指摘している。

信頼感乏しい安全対策

原発の安全対策にも疑問が持たれている。

昨年12月27日、原子力規制委員会は柏崎刈羽原発の安全対策が新規制基準に適合していると判断し、原子炉設置変更許可を出した。だが、その後今年2月になって、重大事故対策設備であるフィルター付きベントの基礎部分が地震時の液状化により破損する可能性があることを東電が明らかにした。

それまでにも、大地震の際に1~4号機の海側にある防潮堤の地下杭が液状化によって曲がり、海側に傾きかねないことが判明するなど、原発の地盤そのものに不安が持たれている。重大事故時に活用するはずだった免震重要棟も巨大地震時に耐震性を満たさないことが明らかになり、再稼働を計画する6、7号機の近くにある5号機内に緊急時の対策施設を設けることを決めた。

こうした経緯もあり、安全対策への地域住民の信頼感は乏しい。前出の安全・安心研究センターの調査によれば、「再稼働した場合の大事故への不安」について、PAZおよびUPZ住民のうち53%が「強い不安を感じる」「かなり不安を感じる」と答えている。また、「再稼働は安全か、危険か」との問いについても、「やや危険だと思う」「非常に危険だと思う」が61%に達している。

「3つの検証をしっかり進め、脱原発社会に全力を挙げる」と明言した花角新知事は、今後、こうした住民の声を正面から受け止めたうえで、公約の実行を求められることになる。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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