しかし、再稼働にこぎ着けようにも、前段階に位置付けられている検証作業がスムーズに進むとは考えにくい。泉田裕彦元県知事時代から継続している「安全管理に関する技術委員会」に加えて、米山隆一前県知事の下で、2017年8月付けで「健康と生活への影響に関する検証委員会」「避難方法に関する検証委員会」が発足。それらの議論の結果を元に「検証総括委員会」で結果が取りまとめられることになっている。
特に難しいと見られるのが、避難体制の構築だ。
新潟県によれば、原発事故発生時に直ちに避難を始める半径5キロメートル圏内の「PAZ」(予防的防護措置準備区域)の人口は約2万0500人。一方、事故時に屋内退避や一定の放射線量になることが想定される場合に避難する5~30キロメートル圏内の「UPZ」(緊急時防護措置準備区域)の人口は約42万9500人に上る(原子力災害に備えた新潟県広域避難の行動指針2018年3月修正版)。
実効性欠く避難計画
政府の方針に従って作られた新潟県の指針では、事故時に5~30キロメートル圏内の住民は即座に避難せず、指示に従って屋内退避などを求められる。しかしながら、福島原発事故で証明されたように、情報が行き渡らないうちに事態が急速に深刻化する可能性がある。
「5キロメートル圏内の住民が避難した後に、5~30キロメートル圏内の住民が行動する」という”2段階避難”の方法が現実に機能する保障はない。その場合、我先にと逃げる住民のクルマで大渋滞となり、道路や橋の損壊で避難そのものがままならない可能性もある。
広瀬弘忠・東京女子大学名誉教授(災害心理学)が代表を務める「安全・安心研究センター」(東京都渋谷区)は昨年11月18日から12月17日にかけて、柏崎刈羽原発から30キロメートル圏内在住の360人を対象にアンケート調査を実施した。
同結果によれば、UPZ住民のうち約34%が「直ちに避難を始めると思う」または「事故情報を確認して、避難指示が出る前に避難すると思う」と回答している。また、「原発事故時に採用される2段階避難は可能か」との問いに対して、PAZ住民の81%、UPZ住民の72%が「おそらく安全に避難できない」または「安全に避難できない」と答えている。
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