こうして、てんやから「上天丼」が消えた エビの価格高騰をもたらした東南アジアの根深い問題
天ぷらの“代名詞”が、思わぬ事情で“高嶺の花”になろうとしている。
天丼チェーン大手のてんやは、「上天丼」「海老天そば」など、エビ天が2本入った一部メニューの販売を10月21日から休止した。天ぷらに使用するエビ「ブラックタイガー」の価格高騰が続く中、このままでは利益の確保が難しいと判断したためだ。
なぜブラックタイガーの価格は高騰しているのか。日本ではエビの消費量のうち、実に9割を輸入に頼っており、ベトナム、インドネシア、タイという東南アジアの3カ国が半分を占める。今、これらの国々から冷凍エビを調達することが難しくなっている。
東南アジアからの調達難で、ブラックタイガーの輸入元売り価格(輸入元が卸売業者に出荷する際の価格)は現在、前年同期比で約2倍(1.8キログラムあたり約4000円)にまで高騰している。
とはいえ、生産量そのものが減ってしまったわけではない。養殖量の多い他品種のエビ「バナメイ」の生産量が激減したため、その代替品としての需要が増え、ブラックタイガーの価格が上昇しているのだ。
「エビなら何でもいい!」業者が悲鳴
バナメイの生産量が激減してしまった背景にあるのが、新手の魚病の流行だ。数年前からタイ、インドネシア、ベトナム、中国などの養殖場で、エビの早期死亡症候群(Early Mortality Syndrome、EMS)と呼ばれる魚病が発生。被害は年々拡大している。生産量が昨年に比べて4割減となる養殖場も出てきた。