ニホンウナギの危機、稚魚不漁で価格高騰 このままではウナギはほぼ絶滅?
「今年は大赤字」。東京・日本橋兜町の老舗ウナギ専門店「松よし」の店主はため息をつく。
かば焼きにする活鰻(かつまん)の仕入れ価格が4月に前年比約2倍の1キロ(5尾程度)当たり約6000円に高騰。「(客足が遠のいて)店が冷えると困る」と値上げを見合わせたものの、1キロ3000円台が損益分岐点という中で先が見えない不安な経営が続く。さらに最近では「適切なサイズのウナギが問屋にない」と、供給量に対する不安もにじませる。
こうした品薄感を見越し、中国の輸出業者も強気の価格を提示。これまで中国産ウナギは国産よりも安かったが、一時は中国産の卸値が1キロ当たり約6000円となり、国産の約5000円を逆転。4月の日中鰻魚貿易会議で日本での消費者離れが話題に上ると、ようやく価格を下げ始めたが、高止まりが続く。
4月以降、専門店は続々と値上げに踏み切ったが、急激な仕入れ値の上昇を吸収するには至っていない。逆に値上げで客足が半減した店も出ている。日本鰻輸入組合の森山喬司理事長は「廃業が相次いでいる。特に小さな専門店はやっていけない」と危機感をあらわにする。
完全養殖は難しい
価格高騰の直接的な原因は、ニホンウナギの稚魚シラスウナギの不漁だ。水産庁によると、稚魚の国内漁獲量は1963年の232トンをピークに減少傾向をたどり、最近は10~20トンを行ったり来たりしていた。だが、今年までの直近3年は10トンにも満たない極端な不漁が続いており、過去にも例がない。
国内で消費されるウナギのうち、天然物は約2%で、残りは養殖物だ。ウナギは生態が解明されておらず、親ウナギに卵を産ませて育てるといった完全養殖による大量生産が確立していない。そのため、毎年冬から春にかけて稚魚を捕獲して育てる以外に方法がない。
国内で消費されているウナギの約6割が中国産や台湾産だが、これらのウナギも国産と同じ海域で稚魚を捕獲して育てており、稚魚の数が減っている状況は変わらない。