ニホンウナギの危機、稚魚不漁で価格高騰 このままではウナギはほぼ絶滅?

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 価格が約半額と安いアメリカ種、アフリカ種などの異種ウナギも日本に入りつつある。ただ、アメリカ種は淡白な味で、アフリカ種は皮が厚く調理に工夫が必要といわれる。脂が乗った肉厚のニホンウナギとは味が異なり普及するかは微妙だ。東京の卸売業者は「異種ウナギは外食や量販向けにまず回されるだろう」とみている。

そもそも稚魚が不漁となった原因は自然環境の変化、濫獲など諸説ある。だが、「どれも科学的な知見がなく、実際にはどのような対策が資源保護につながるのかがわからない」と関係者は口をそろえる。

近畿大学農学部水産学科の有路昌彦准教授は「ウナギはこのままではほぼ絶滅する」と断言。そのうえで「代替の魚を探す必要がある。資源が豊富で養殖もでき、ウナギと同様のビジネスモデルに乗るのはおそらくナマズだけだ」と指摘する。

千葉の卸売業者、もがみの佐藤圭亮社長は「資源の減少はウナギをこれまで山積みにして、たたき売りしたせい」と苦言を呈する。

ウナギは世界的に枯渇しているとの説もあり、米国政府はアメリカウナギを野生動物の保護を目的としたワシントン条約の対象にすることを検討。アメリカウナギの稚魚と見分けがつきにくいニホンウナギを類似種として、併せて規制する可能性もある。そうなれば、これらの稚魚の国際取引に輸出国の許可が必要になり、輸出国の判断次第で輸出手続きが煩雑化する可能性もある。輸出量も規制されれば、価格高騰に一段と拍車がかかるのは必至だ。

(平松さわみ =週刊東洋経済2012年7月28日号)

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