岡田武史氏「新スタジアム構想」の意外な狙い

子ども食堂の領域にも近いビジョンがあった

岡田:ぼくが作りたいのはそういう場所なんです。

今、ぼくたちは今治市に1万5000人入れるスタジアムを造ろうとしています。40億円集めて。でもそこをサッカーに使うだけじゃあ経営的に成り立たないし、つまんない。

サッカーの試合は年間約30試合です。それ以外の330日も人の集えるような場にしたい。いちばんやりたいのは3世代が集う場です。子どもたちや学生や親たちが集えて、そこに託児所もあって、託児所では瀬戸内海の島のおばあちゃんが子どもを見て、子どもたちがお年寄りに出し物を見せるみたいな、そんなコミュニティができないかなあと思って……。

湯浅:スタジアムでですか。

サッカーもこども食堂も、ぼくの中では同じ

岡田:そう、スタジアムを「場」にしたいんです。世界中どこに行っても市庁前広場とかがあります。日本は神社仏閣だったと思うんですが、そういう場所がなくなってきてます。今治もそうです。スタジアムを、そうした地域のにぎわいをつくる場所、人々が集う場所にしたい。そうでないと、今サッカースタジアムを40億円かけて造る意味ってないと思うんです。

湯浅:スタジアムを核に、サッカーを核に、地域に人と人が触れ合えるにぎわいの場所をつくる。そこから、おカネや家庭環境の問題ではじかれる子どもをつくらない。それでこども食堂。

私たちも今、こども食堂がそうしたにぎわいの核になり、すべての子どもたちが安心して来られるような場所にするためのプロジェクトを実施しています。

「こども食堂安心・安全プロジェクト」のメンバーたち(撮影:(株)キャンプファイヤー)

岡田:誰かがはじかれたままで成り立っている場所じゃあ、本当の意味でみんなが楽しめないですからね。

でも、それだけじゃないんです。

栗林:と言うと?

岡田:やはり「モノの豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」というぼくたちの企業理念に立ち戻ります。

私は学生時代から環境問題を勉強していて、サッカーの傍らずっと自然体験教室などもやってきていますが、サッカーも自然体験教室もこども食堂も、ぼくの中では全部同じなんです。

ネーティブアメリカンの人たちがずっと言ってきて、今でも言っていることばに「地球は、先祖から受け継いだのではなく、未来の子どもたちから借りている」というものがあります。借り物は壊したり、傷つけたりしちゃいけない。でも私たちはどんどんこの「借り物」を痛めつけている。それはやはり、モノの豊かさを追い求めてきたからだと思うんです。大量生産・大量消費の。

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